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新型コロナウイルスに感染し、無症状での自宅療養の経験から考える事 その1

新型コロナウイルスに感染し、無症状での自宅療養の経験から考える事 その1

PCR検査で陽性となりました

今年の夏、私は新型コロナウイルス感染者の「濃厚接触者」となり、直ちに「かかりつけ医」にPCR検査をしていただきました。
すると、一回目では正式な検査結果が出ず、再検査の結果、最終的に陽性と診断されました。

その時私は発熱も咳や鼻水などの症状も全くなく、新型コロナウイルスの特徴として有名な味覚・嗅覚障害もまったく出ていない状況で、正直に申しまして、文字通り「狐につままれた気分」でした。
しかし、同時に私が無症状であったことから、誰かに感染させてはいないかという強烈な責任感と不安感に見舞われました。

そこで、直ちに検査結果が出る日までの2週間の行動を振り返り、主治医及び保健所に報告し、私には「家族以外には一人も濃厚接触者はいない」という判断がなされました。
こうしてPCR検査の結果を受けて、「無症状の自宅療養者」としての生活を経験し、すでに保健所による自宅療養解除の指示を受けて以降、一定の日数が経過しています。

ここに、その経験と考察を記したいと思います。

経験を記したいと思った動機

新型コロナウイルスが流行しだして以降、私は感染予防の為に、自宅以外での不織布マスクの常時着用、手洗い及びアルコール消毒の励行、換気の実施、いわゆる「3密」の回避、不要不急の外出をしない、外食・会食をしない、毎日数回体温や血中酸素濃度を測定するなどの健康管理を行ってきました。
そんな私が、思いがけず濃厚接触者となったために、PCR検査を受けることとなり、感染が判明しました。
そうでなければ、無自覚の内に感染し、無症状のままで生活していて、ほとんど外出はしていないとはいえ、普段の買い物先などで誰かに感染させていたかもしれません。

そこで、いろいろと本人が感染予防対策に注意しているつもりでも、現状では感染する可能性が高まっている状況にあって、私の経験をお伝えすることが、何かのお役に立つかもしれないと考えました。
私が公表すれば、家族や仕事や活動の関係者等への憶測や迷惑が及ぶかもしれないとも思いましたが、それ以上に経験をお伝えすることが有意義ではないかと考えてここに記します。

2回目のワクチン接種を終えてからの感染

私が在住する三鷹市では、ワクチンの支給時期が東京都でも最後の順番であったこと、数量も当初は極めて限定的であったという報道であったことから、三鷹市民への当初は少ない配分量の中から接種を受けるのではなく、国の大規模接種センターでの接種を選択しました。
そして、三鷹市から接種券が送付された直後にインターネットで予約をして、6月に1回目、7月に2回目の接種を受けました。
検査結果が出た時は2回目のワクチン接種から1か月以上経っていましたので、私の事例はいわゆる「ブレークスルー感染」という事になります。

厚生労働省が発表しているデータによれば、8月10日から12日の感染者57,293人の内では、ワクチン未接種は約82%、1回のみ接種者は約5%、2回接種済み者は3%だったということです。
私自身が無症状であり、よもや感染しているとは考えていなかったことからも、無症状の人は必ずしもPCR検査を受けるわけではないようですから、2回ワクチンを接種して感染している人は3%以上潜在している可能性もありえると思います。

「無症状である陽性者」の二面性とジレンマ

先に紹介しましたように、私はワクチンを2回接種して1か月以上経ってから新型コロナウイルスへの感染が分かりました。
感染が分かっても、発熱もなく、血中酸素飽和度も低下せず、咳や鼻水も出ず、敢えて言うならば花粉症の時のようなのどのいがらっぽさが多少ある程度の症状でした。

本人としては、感染しているといっても体調が悪くて辛いとか医療機関に入院して医療行為を受けるということもないので、幸いと言えます。
けれども、もし仮に、私がPCR検査を受けることがなければ、感染しているという自覚を持つことはありませんでした。

普段は不要不急の外出自粛に努め、自宅以外では玄関先に郵便物を取りに出る時・花に水をやる時にも不織布マスクの着用を励行していたとはいえ、買い物に出かけた際には、不織布マスクをしていたとしても、無意識に他者に感染させたかもしれないわけで、そのことを想うと、検査をしたこと・陽性を自覚したことは、辛かった半面、私からの感染可能性は食い止めることができたのだと受け止めています。
すなわち、「無症状」とは本人にとっては幸いな状況であるとはいえ、陽性を自覚できないでいる時には、まったく無意識に感染源になるかもしれない恐れがあるのです。

一般には、感染者の約3割が無症状と言われています。
この点に、無症状者の二面性とジレンマを感じています。

「HER-SYS(厚生労働省新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)」への体温等の報告と自身による健康観察

私の場合、検査結果が出たのは検査日の翌日の平日夜遅くでしたが、かかりつけ医が検査結果を私に知らせてくださるとともに、直ちに保健所に連絡をしてくださったので、当日の22時台に、私の携帯電話には所管の多摩府中保健所からショートメールが届きました。
それは、「HER-SYS(厚生労働省新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)」の保護観察画面のURLと私のHER-SYSのID(個人番号)を知らせるとともに、それにアクセスして健康状態の入力をするようにとの通知でした。

私は早速そのURLにアクセスして、名前、メールアドレスとHER-SYSのID及び暗証番号を登録しました。
HER-SYSにおける入力項目の基本は、「体温°C」「酸素飽和度(SpO2)%」の数値です。

その数値の後に、

  • 表情・顔色が明らかに悪くなっている
  • 咳・たん・鼻水がひどくなっている
  • 呼吸困難・胸が苦しい、息が切れると感じる
  • 倦怠感・起きるのが辛いと感じる
  • 嘔吐・吐き気が続いている
  • 1日3回以上、下痢の症状がある
  • ぼんやりする、もうろうとすることがある
  • 食事をすることが困難、またはできない
  • 半日で一度も尿が出ていない

の9項目にそれぞれ「はい」あるいは「いいえ」を押します。

最後に自由記入欄があり「その他の症状(鼻水・鼻づまり、のどの痛み、結膜充血、頭痛、関節痛、けいれん、その他の気になる症状)」について自由に書く欄があります。
入力したら、内容を確認したうえで、送信するようにされています。

その後別のメールで、原則として午前9時と午後4時には登録することが求められていると知ることになるのですが、私は自分の考えで毎日、朝、昼、午後、夜、就寝前というように、3回から5回記入して送信しました。
また、自分で記入した履歴を確認することができますので、自分の経過を振り返ることができます。

ただ、コロナ禍にあって、体温計は持っている人が多いと思いますが、血中酸素飽和度については、測定するパルスオキシメーターを持っている人は少ないと思います。
私の場合は、普段から使用しているのスマートウォッチ(Apple Watch)に血中酸素飽和度を測定する機能がありましたので、日頃から測定してきましたし、この期間もその数値を記入していました。

アップルウォッチとは、Appleが開発して提供しているスマートウォッチです。
電話の進化版がスマートフォンであるように、スマートウォッチも時計の進化版として、時刻を示すだけでない様々な機能を持っています。
スマートウォッチは基本的に同じ持ち主のスマートフォンと連携させて使用するものがほとんどであるので、スマートフォンに電話がかかってきたり、メールやLINEの連絡と連動するとともに、特に血中酸素飽和度、心電図が取れたり、ウオーキングやジョギングなどの運動の時間や程度を測定し記録することができることが特徴です。
私の場合は、今回の経験では、特に血中酸素飽和度の測定に効果を発揮してくれました。

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私は、日ごろ、パソコンやスマートフォンを利用し、メールのやりとりをしたり、インターネットに接続して情報を入手したりしています。
けれども、パソコンやスマートフォンを利用していない人には、HER-SYSの利用は決して特別に難解ではないとはいえ、戸惑いがあるかもしれないとも感じました。

また先日、感染した妊婦が自宅療養している間に容態が急変し、入院先が見つからないまま出産して赤ちゃんが死亡した事件を受けて、HER-SYSにおいても「妊娠中の情報などの記入が必要」との問題提起がありました。
同様に、「基礎疾患・ワクチンの接種状況・濃厚接触者だったのか否か」などの情報も自宅療養の容態を把握する上で必要であると感じます。
今後、匿名化は必須としても、感染者の実態把握と適切な対応に資する研究に活かせるような項目について、精査して迅速に項目を追加するなどの対応が必要ではないかと感じました。

かかりつけ医と保健所の支援

かかりつけ医について

私は、自身が濃厚接触者になった時に、まったく症状がありませんでしたが、すぐにかかりつけ医に相談しました。
かかりつけ医では、「症状がない場合は抗原検査では結果がでにくいので、まずは自宅でもマスクをして原則として個室で過ごし、2、3日後には症状がでなくてもPCR検査で確認する」ということになりました。
そして、症状はありませんでしたが、濃厚接触者になって3日後に、かかりつけ医の診察を受けて、PCR検査をしていただきました。

「かかりつけ医」とは、日本医師会の定義によると、「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」です。
私の場合は比較的健康ですが、「かかりつけ医」には、たとえば花粉症や過労の際に相談に乗っていただいて薬を処方していただいたり、インフルエンザの予防注射の接種を受けたりすることなどでお世話になっており、必要に応じて、血圧測定、血液検査などを通じて体調を診ていただいています。
また、私の亡母は定期的な健康診断から予防接種はじめ全般的に診ていただいていましたし、子どもたちも幼い頃からそれぞれ折々に診察していただいているなど、まさに、家族ぐるみでお世話になっています。

心強かったのは、私のかかりつけ医は東京都医師会でも感染症対策を担当されているなど、新型コロナウイルス感染症についても深い知見と診療経験を持っていらっしゃったことです。
最近は、毎日のように通院されている患者さんを対象にワクチン接種もされています。
そこで、今回の診察と検査についても、我が家にかかりつけ医がいたことが本当に心強かったと思います。

かかりつけ医は自宅療養期間中には、こちらがかけなくても時々電話をくださり、体調を把握しご助言をいただきましたこともあり、精神的に安定して自宅療養を送ることができました。
この経験から、私は、かかりつけ医のいない方には是非ともかかりつけ医を見つけることを提案します。

保健所の支援について

本格的に自宅療養を開始して以降に保健所の保健師さんから電話を受けたのは、検査結果が出てから3日後のことでした。
最近では東京都で感染者数が激増しており、私は無症状であったことから、3日後に最初の電話がきたことはしかたがないと思っています。

保健師さんは、かかりつけ医からの私の状況に関する報告とともに、「HER-SYS(厚生労働省新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)」に私が登録した保護観察画面を見ながら、陰性の家族との対応などの相談に乗ってくださいました。
無症状とはいえ、健康観察を継続して、もしも体調が急変したらすぐに連絡をしてほしいこと、自宅療養生活については「自宅療養者フォローアップセンター」があり、毎日24時間対応しているので困ったことが生じたら遠慮せずに相談するようにと紹介してくださいました。

また、私自身も、私の濃厚接触者である陰性の家族も、外出を自粛するため買い物には出かけられないので、「食糧については支援するので送ります」と言ってくださいました。
我が家ではコロナ対策・災害時対策に向けて一定程度の食糧の備蓄をしていましたが、家族が多いこともあり、仮に自宅療養が長引く場合には不安もあったので、受け取ることにしました。

そして、「HER-SYS」で血中酸素飽和度についてはスマートウォッチで測定していることを伝えていたことから、「パルスオキシメーターの貸し出しをするので送る」とのことでした。
いずれにしても、連日の相談対応で疲労も極限ではないかと推察する保健師さんの、大変に穏やかで落ち着いた優しい対応と、私の容態の的確な把握及び助言、有用な情報提供によって、大いに安心感を得られました。
私はこの間、無症状で推移しているので、「急変があればかかりつけ医と保健所にすぐに相談するので、中等症・重症の方への連絡を優先していただいてよい」と申しました。


今回の記録は長いため、次回に続きます。

新型コロナウイルスに感染し、無症状での自宅療養の経験から考える事 その2

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