【こども誰でも通園制度の「生みの親」から「育ての親」へ】~公定価格の公表を受けて、【こどもまんなか】の専門性が輝く制度へ~
- 2025/12/24
- 日記・コラム, 審議会・委員会等
- こども誰でも通園制度, こども家庭庁, こども誰でも通園制度本格実施に向けた検討会, こどもまんなか, 保育園, 幼稚園, こども園
12月19日、私が構成員を務める【こども誰でも通園制度の本格実施に向けた検討会】(第3回)が開催されました。
今年度最後となるこの会議で、令和8(2026)年度からの全国展開に向けた「取りまとめ」についての意見交換が行われました。
【こども誰でも通園制度】とは、保育園等に通っていない0歳6ヶ月~3歳未満の子どもが、保護者の就労要件などを問わず、月一定時間まで保育施設を利用できる制度です。
2026年度から全国で本格実施され、「子どもが健やかに育つための社会全体での支援」「子育て家庭の多様なライフスタイルへの対応」を目的とし、集団生活の機会を提供することで子どもの成長を促し、面談や母子通園などを通して保護者への相談支援も行うものです。
今回は、当日の議論の詳細や、初めて公表された「公定価格」の内容、そして制度の未来に向けた想いについて、詳しくご報告します。
1. 会議の全体像 ―多岐にわたる論点―
当日は、【こども誰でも通園制度の本格実施に向けた検討会の取りまとめ(案)】について、制度の根幹に関わる令和7年度の実施状況・準備状況、研修(新コースの創設など)、公定価格、実施に関する手引の改訂案などの重要な資料が提示され、議論が行われました。
2. 「公定価格」の公表 ―現場の声が「加算」として結実―
今回の会議で特筆すべきは、「公定価格について」の資料が初めて具体的に示されたことです。
構成員の皆様はこれまで、「制度の質を担保するためには、現場の手間や専門性を適正に評価すべきである」との意見を多く主張してきました。
今回示された価格設定には、たとえば、私がこれまで現場で着実に実施されるように加算等の対応を提言してきた項目についても「加算」という形で明確に反映されていつことを心強く思いました。
たとえば、以下の項目です。
① 「初回面談」の評価 ⇒ 【初回対応加算】の新設。
安全で安心な利用のために不可欠な事前面談等が、重要であると発言してきました。
これに対し、事前面談(30分以上)や事後面談を実施した場合に算定できる「初回対応加算」が新設されました。
② 「保護者支援」の評価 ⇒ 【保護者支援面談加算】の新設。
単にこどもを預かるだけでなく、保護者の悩みや孤独感に寄り添うことの重要性を指摘しました。
これを受け、育児相談等に対応する面談(30分以上)を行った場合に算定できる「保護者支援面談加算」が新設されました。
このほか、障害児加算、医療的ケア児加算の充実に、「生活困窮家庭等負担軽減加算」や「賃借料加算」なども盛り込まれ、事業者が安定して運営できる基盤への配慮が伺えれました。
3. 提言の総仕上げ ―取りまとめへの反映―
また、これまで私が提案してきたその他の内容についても、最終的な「取りまとめ」や「手引(マニュアル)」に位置づけられました。
たとえば、【職員のメンタルヘルスへの配慮】については、手引に独立した項目が新設され、管理職による伴走の重要性が明記されました。
また、【地域の実情に応じた柔軟性】については、全国一律「月10時間」が困難な自治体に対し、令和8・9年度は「3時間~10時間未満」で設定できる経過措置が認められました。
また、幼稚園等の満3歳児クラスの活用や、広域利用の際には設置した自治体住民のための「優先予約枠」の設定について、手引等に明記されました。
4. 「生みの親」から「育ての親」へ
会議の最後、こども家庭庁の中村英正・成育局長より、心に響くご挨拶がありました。
「構成員の皆様には、これまで活発なご議論をいただき感謝申し上げます。皆様は、この新しい制度の『生みの親』です。しかしこれからは、制度が現場で健やかに育っていくよう見守り、導いていく『育ての親』になってください」と。
この言葉に、身の引き締まる思いがいたしました。
私は市長経験者として、昨年度の試行事業から今年度にかけて、手探りの中で創意工夫を重ね、準備を進めてこられた全国の自治体職員の皆様、そして事業者の皆様に、心からの敬意と感謝を申し上げます。
新しい制度の趣旨を理解し、試行し、自治体として先行して取り組まれてきた皆様の実践があったからこそ、この制度は形になり、本格化に向けた課題や解決の道筋が見えてきました。
5. 専門性が深まり、やりがいあふれる場へ
この制度は、こどもたちにとっての居場所であると同時に、現場で働く保育士や幼稚園教諭をはじめ、こどもたちに関わる全ての職員の皆様にとっての希望の場でもあることを願っています。
これまで家庭の中に閉じていたかもしれない0歳6か月から3歳のこどもと保護者と出会い、その成長を支えることは、専門職としての知見をさらに広げ、深める機会になると思います。
職員の皆様が、自身の専門性が発揮されていると実感し、誇りとやりがいを持って働ける環境こそが、結果として、こどもたちの最善の利益につながる「質の高い育ちの場」を生み出すのだと確信しています。
6. 「こどもまんなか」の制度としての【こども誰でも通園制度】
制度は「作って終わり」ではありません。
むしろ、これから本格実施される中で、この制度が本当に【こどもまんなか】になっているかを検証し続けることが不可欠です。
〇こどもにとって、無理なく楽しい時間になっているか?(こどもの視点)
〇保護者の孤立感などの悩みは解消され、前向きな子育てにつながっているか?
〇保育士等がやりがいをもってこどもたちの育ちを支えているか
こうした効果を質的・量的の両面からしっかり検証し、より良い制度へと改善(PDCA)していくことについて、「育ての親」の一人として、私も引き続き、現場の皆様と共にこの制度を大切に育てていく決意です。
*共に議論を尽くした構成員の皆様は、座長の秋田喜代美学習院大学文学部教授・東京大学名誉教授はじめ、研究者、自治体実務者、事業者代表など、多角的な視点を持つ21名の皆様です。(五十音順・敬称略)
赤坂緑(NPO法人全国小規模保育協議会理事)・秋谷允(松戸市子ども部保育課長)・
阿部淳子(愛媛県保健福祉部生きがい推進局子育て支援課長)・伊藤唯道(全国保育協議会副会長)・内野光裕(全日本私立幼稚園連合会副会長)・王寺直子(NPO法人全国認定こども園協会代表理事)・尾木まり(有限会社エムアンドエムインク子どもの領域研究所所長)・奥山千鶴子(NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長)・小野 敏伸(福岡市こども未来局事業調整課長)・菊地加奈子(社会保険労務士法人ワーク・イノベーション代表)・北川聡子(社会福祉法人麦の子会理事長)・倉石哲也(武庫川女子大学心理・社会福祉学部教授)・首長正博(栃木市こども未来部長)・
竹原健二(国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部・部長)・原田樹(七尾市健康福祉部子育て支援課長)・堀科(東京家政大学児童学部教授)・万井勝徳(高槻市子ども未来部子育て企画官)・水嶋昌子(NPO法人家庭的保育全国連絡協議会理事長)・森川明子(愛知県福祉局子育て支援課長)・清原慶子(杏林大学客員教授、前三鷹市長)
清原慶子 Official Website
