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「声なき声を聴く」「声なき声を聴こうと努める」ことの大切さと、子どもシェルターをつくる活動

「声なき声を聴く」「声なき声を聴こうと努める」ことの大切さと、子どもシェルターをつくる活動

1969年、アメリカ大統領のニクソンは声高に自分の政治的意見を唱えることをしない【サイレント•マジョリティ】に注目しました。特に都市部での暴力的なデモを嫌い、社会的秩序の回復を願っている【声なき声を持つ大衆の力】を信じて、声高の世論以外の隠れている世論があることを信じていたのではないかと言われれています。
昨今、SNSなどが普及し、これまでに比べて市民は自由に意見を発信できる機会を得ましたので、現代では【声なき声】はそれなりに顕在化しているとみる人もいます。たしかにSNS等で自分の不安や不満、意見や提案を直接言えるタイプの住民もいます。
けれども多くの人々は、自分が直面している心の悩みや生活の課題を行政課題として位置づけて、行政機関等に相談する人ばかりではありません。
むしろ、そうしたことができる人は本当に一握りで、自身で悩みを抱え込んで、さらに苦しむ人が少なくないとも言えます。
【声なき声が存在しない】とは決していえない状況です。
【二元代表制】の自治体では、議員の皆様が身近な住民の声を代表しますので、首長や行政は【声なき声】を聴き、その課題とどう立ち向かうかがなおさら重要だと私は思います。

私は市長の現役時代に、直接お会いしてお話しできた人たちの意見によって気づかせていただく行政課題が多々ありました。
同時に忘れてはならないのが、そういった【声ある声】ばかりに耳を傾け、【声なき声】を忘れてはいないかということです。
もしも私が市長としてその耳に届いた声だけを聴いて、住民の声を反映していると自負したならば、大いなる誤りに陥っていたことでしょう。
私は市内の様々な地域団体の会合等に頻繁に出席しましたが、役員を務めたり出席されている主要な人々が同じであり、役職を重ねて引き受けていらっしゃることに気付き、皆様のご尽力に敬意と感謝の気持ちでいっぱいでした。

同時に、19万人へと増加傾向にあった人口増の過程で、市長として出会うことができ対話できる住民の人数は限られていることにすぐに気づきました。
【声なき声】の存在とそれをしっかりと聴き出すことの必要性は、市長であることに大きな使命感を与えました。
そこで、毎回テーマを決めて、10人程度の市民の皆さまに公募で集まっていただく【市長と語り合う会】を開催しました。
また、住民基本台帳から無作為抽出で選んだ市民の皆さまに、市政の課題について討議していただく【みたか・まちづくりディスカッション】を創設し、基本計画策定・改定や防災や安全安心のまちづくりやこども子育て支援をテーマに議論していただき、提案をいただきました。

加えて、住民基本台帳から無作為抽出で選んだ市民の皆さまに、市民会議・審議会等の市民枠の委員をお引き受けいただいてきました。
地域福祉部門やこども政策部門の職員には、市民の来訪を待つだけでなく、可能な限りアウトリーチで市民の皆さまの実態や直面する課題を引き出すように依頼してきました。
これらの取組みは決して、十分であったとは思いませんが、市長として職員と共に【声なき声】を聴く姿勢を一貫して持ち続け、市民や市民団体の皆様との協働を保持してきたつもりです。
特に困難に直面する、こども・若者の声を、おとなは聴き、適切に支援していく必要があります。

私が客員教授を務めている杏林大学保健学部の加藤雅江教授は、三鷹市内で「だんだんばぁ」という愛称のこども食堂の運営をされ、精神保健福祉士として若い女性の相談事業も実施されています。
そうした経験から、さまざまな事情により、安全に暮らすことができないと感じている子どもたちを、緊急で保護する「子どもシェルター」を、弁護士や大学教員、行政機関職員、子ども・若者支援の活動をしている人等が集まって、多摩地区で開設・運営することを目指しています。
そして、2022年8月「特定非営利活動法人子ども・若者センターこだま」を設立しました。
4月15日には「多摩に子どもシェルターを作る~地域でおとなができること~」が三鷹市民恊働センターで開催されます。
加藤さんは呼びかけます。
「私たちが生活する多摩地域には、今晩安心して過ごせる場がない子どもがいます。子どもらしく育つ場がないから、大人のように振る舞うしかない子どもがいます。『こだま』は、子どもたちが安心して過ごせる場と時間を作ります。子どもが、自分のことをかけがえのない、1人の人間なんだと信じられるように、子どもが過ごす場と時間を、子どもたちと一緒に作ります。」
【声なき声】を大切に聴き、必要な支援を進めようとする「NPO法人子ども・若者センターこだま」の取組みへの、皆様のご注目をお願い致します。

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