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静岡県を訪問して(その1)【全国大学コンソーシアム研究交流フォーラム】で報告者をつとめました

静岡県を訪問して(その1)【全国大学コンソーシアム研究交流フォーラム】で報告者をつとめました

9月3日(日)午前、常葉大学静岡草薙キャンパスで開催された【第20回全国大学コンソーシアム研究交流フォーラム】における、公益社団法人学術・文化・産業ネットワーク多摩主管の【第2分科会:『地方創生』に産官学連携はどのような役割が期待できるか】に報告者として参加しました。
コーディネーターは細野助博先生(中央大学名誉教授、学術・文化・産業ネットワーク多摩専務理事)で、私が東京都八王子市にある東京工科大学メディア学部教授を務めていた際から、ある区の研究会でご一緒したり、多摩地域の大学教員同士として、学術・文化・産業ネットワーク多摩の活動をご一緒していたご縁があります。
他の報告者は、森ビル株式会社都市開発本部計画企画部メディア企画部参与の矢部敏男さん、法政大学法学部教授の土山希実枝さんです。
私は『地方創生』に産官学連携はどのような役割が期待できるか、というテーマについて、下記のような項目で報告しました。
1.「民学産公官の協働」について
2.各省で進めている地域コミュニティに関する取組
3.三鷹市と杏林大学の協働の取組み事例
4.「デジタル田園都市国家構想」にみる地域社会と大学の協働
5.大学が地域課題解決に期待されるチカラ
特に、地方創生、コミュニティ創生に関する大学との協働については三鷹市長に就任した2003年に直ちに、当時の法政大学の清成忠男総長を座長にお願いして、三鷹ネットワーク大学・大学院の検討を開始していただき、そのご提案を踏まえて、2005年3月には、14の教育・研究機関(アジア・アフリカ文化財団、亜細亜大学、杏林大学、国際基督教大学、国立天文台、電気通信大学、東京工科大学、東京農工大学、日商簿記三鷹福祉専門学校、日本女子体育大学、法政大学、明治大学、立教大学、ルーテル学院大学)と三鷹市が基本協定を締結し、5月には「三鷹ネットワーク大学推進機構」(理事長・清成忠男先生)を設立し、特定非営利活動法人(NPO法人)認証を東京都へ申請し、6月には「三鷹ネットワーク大学条例」を三鷹市議会で可決していただき、その後会員や賛助会員を増やしながら、市民対象の講座開設や調査研究活動、関係団体のネットワーク化支援などを行ってきていることを紹介しました。
また、市内の杏林大学が、2013年に文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」の選定を受けた際に、三鷹市長として、八王子市・羽村市とともに、杏林大学と三鷹市が協定を交わして、
「新しい都市型高齢社会における地域と大学の統合知の拠点」事業について(文部科学省 補助期間:2013~2017年度)協働した経験を報告しました。
文部科学省のこの事業は、【大学等が自治体と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学を支援することで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ること】を目的としています。
地域は日々の暮らしに関わる問題から、社会や経済の活性化、災害等の危機管理まで、時代の変化に伴う新しい課題に直面しています。そこで、杏林大学は、これらの 課題に対して医学部・保健学部・外国語学部・総合政策学部4学部の垣根を越えた学際的な視点を入れて、三鷹市・八王子市・羽村市と協働したのです。
当時の事務局は杏林CCRC研究所でしたが、2021年には「地域総合研究所」に名称変更を行い、関連して地域交流推進室は2022年4月に「地域連携センター」に名称変更しています。     
「地域総合研究所」の2023年度指定テーマは、①学生と地域関係者が共に学ぶ「生きがい創出」、②退職団塊世代を中心とした地域の人々の「健康寿命延伸」、③大規模自然災害に備える「災害に備えるまちづくり」、 ④地域の活性化を目指す「にぎわい創出」です。
地域総合研究所所長の長島文夫教授(医学部腫瘍内科学教室 教授)は「健康教育、街づくりを意識した情報の利活用に関する研究」として、「高齢がんにおけるウェアラブルデバイスを用いた生体情報採録システムの実施可能性試験」「『がん教育』がつなぐ地域の健康と次世代への教育」などを進めています。
また、国の「デジタル田園都市国家構想」推進の事例の1つである【八幡平市メディテックバレープロジェクト(遠隔診療・見守り DX 基盤の構築による持続可能な地域づくり)】にも協力しています。八幡平市は人口流出に端を発して全国の過疎地で発生している諸問題の解決に資する、地方で生まれたオリジナルの未来技術を実装することによって、デジタル田園都市国家構想に適合した活力ある社会を実現することを目的としたものです。市販の安価なスマートウォッチを用いてバイタルや位置情報等を収集・蓄積し、健康状態の推移を常時モニタリングするソフトウェア「Hachi」を開発した。常勤医師が不在となった診療所の地域住民が当該デバイスを装着することによって健康状態を可視化し、遠隔であっても対面と遜色ない水準での診療を実現。また同一のソフトウェアを用いることで遠く離れた家族も高齢者の見守りに参画可能となり、過疎地域の持続化に資する仕組みとして社会実装を進めています。
このように現在客員教授を務めている杏林大学の地方創生に関する取組みの事例を紹介しつつ、他の自治体の取組みと大学との協働の事例からも考察して、以下のような方向性を提起しました。
【大学が地域課題解決に期待されるチカラ】
1.地域の実態と課題の把握への貢献
(1)多様な視点からの課題発見
⇒「高齢者」「障がい者」「こども・若者」、誰一人取り残さない視点
(2)具体的で適切なデータ把握
⇒社会課題解決に向けた研究調査力
⇒医学・理工系・社会科学・人文科学等の分野を超えた学際的研究の貢献度高い
⇒EBPMへの貢献
2.地域の課題解決に向けた体制づくりへの貢献
(1)多様な主体の参画を促す「コミュニケーション」
⇒公正中立な立場による民学産公官の多様な地域資源のネットワーク化
⇒住民・多様な関係機関との「協働」「協創」のプラットフォーム
(2)具体的な課題解決の担い手づくり
⇒若者・成人の学び直しの機会の提供
3.多世代間・多様な組織間をつなぐ、むすぶ、「コーディネート」の能力の発揮
(1)初等中等教育において求められている【地域に開かれた教育課程】
   高等教育に求められてきた【地域に開かれた高等教育】
⇒多分野の教員・研究者間での共同研究・共同ソルーションの展開と社会の実相に則した政策研究等の質の向上
矢部さんは、長らくご自身が参画されてこられて静岡県浜松市や長野県茅野市で進めている「テレワーク支援」「I公共交通としてのオンデマンドタクシーの効率的運行」「地域創生に向けた人財育成」等の事例を報告されました。
土山さんは、前任の龍谷大学で20年ほど前から実践してこられた「地域公共人材」としての「地域公共政策士」の育成の意義と現状・今後について報告されました。
3名の報告者の報告後に、細野先生のコーディネートで、報告者同市及び会場の参加者の皆様とのやりとりで、本テーマを深めました。
急速に進む少子長寿化の過程にあって、大学は、地方創生に向けて、行政や産業界はじめ地域の幅広い団体と連携して地域課題解決に向けて貢献する方向性についての議論が深まりました。
私は大学人として、市長経験者として、今回のフォーラムに参画して、改めて【『地方創生』に産官学連携はどのような役割が期待できるか】という課題の現代的意義を痛感しています。

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