【生涯学習】を通して、すべての人の【ウェルビーイング】を目指すことの大切さ
梅雨明けしてから、35度前後の高温の日が続いています。
【地球温暖化】という用語より、【地球高温化】【地球熱帯化】といった用語の方がぴったりする感じの気候です。
報道では北海道の各地域でも30度を超す高温が続いて、熱中症を発症された方も多くなっているとのことです、
全国的に「熱中症アラート」が連日発令されていて、東京消防庁からは連日【救急車ひっ迫アラート」が発令されています。
皆様も、決して無理をしないで健康第一に過ごされていると思います。
さて、現在、私たちの生活を考えるときに【ウェルビーイング】という用語は欠かせません。
【ウェルビーイング】とは、社会や生活の質を考えるときに、言わば【新しいものさし】を提供してくれます。
これは、経済だけではなく、こころの充足、生活への評価・感情・価値、健康などを含む概念です。
英語の【Happiness】が、相対的に短期的で個人的な感情としての【しあわせ】を表すとするならば、【Well-being】は個人だけでなく、個人をとりまく【場】が相対的に持続的によい状態であることを示す概念です。
そこで、【ウェルビーイング】を実現するためには、自然環境、地域や社会の環境、文化的、教育的な環境それぞれの安全に安心して暮らせる生活基盤としての条件整備が求められます。
そして、7月末に、文部科学省中央教育審議会第129回生涯学習分科会が開催されて、私は分科会長として会議の進行を行いました。
その会議でお隣の席でご一緒したのが、中央教育審議会委員として生涯学習分科会に参加してくださっている【京都大学人と社会の未来研究院】の院長・教授である内田由紀子さんです。
内田さんとは、第11期の中央教育審議会に設置された、現行の【第4期教育振興基本計画】について審議する特別部会の委員もご一緒しました。
そして、その審議によって、その【計画のコンセプト】には、【2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成 】とともに、【日本社会に根差したウェルビーイングの向上】が明記されました。
この計画では【ウェルビーイング】を、【身体的・精神的・社会的に良い状態にあること。短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念】としています。
この日の生涯学習分科会では、閣議決定されたいわゆる骨太の方針や大学に関する【知の総和】答申などを共有した後に、【リカレント教育】について意見交換をしました。
意見交換に先立ち、文部科学省片見悟史・リカレント教育・民間教育振興室長から【リカレント教育推進の現状について】、ボストン コンサルティング グループマネージングディレクター & パートナーの折茂美保さんから【リカレント教育を取り巻く産業界/大学の状況】についての報告をしていただきました。
その上で、リカレント教育について【大学】【企業】【個人】の各視点からの意見交換をと論点の提案がありました。
私からは、前期の【第12期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理】の副題は【全世代の一人ひとりが主体的に学び続ける生涯学習とそれを支える社会教育の未来への展開;リカレント教育の推進と社会教育人材の養成の在り方】になっていることを説明しました。
すなわち、【リカレント教育】は、主として企業に求められる【リスキリング】のような職業上の必要性のみを契機とするだけでなく、専門職、公務員やNPO法人等多様な職業分野、さらに退職後の世代の学び直しなども含む広義の概念なのです。
人生100年時代と言われる現在、経済的豊かさのみならず精神的な豊かさから幸福や生きがいを捉える【ウェルビーイング】を目指し、誰もが生涯を通じて意欲的に楽しく学び続ける上で、1つの重要な取組みが【リカレント教育】なのです。
その上で、デジタル化の恩恵を活用し、誰一人取り残されないように、デジタルデバイドの解消が求められます。
障がい者や在住外国人など社会的に制約のある人々の学習ニーズに即した学びを提供する在り方も検討する必要があります。
内田さんは、すべての人のウェルビーイングの実現を目指して、学ぶことが過大な負荷とならないような柔軟な学習環境整備の必要性や、リカレント教育が円滑に進むための多機関の連携を実現する高等教育機関、自治体や地元企業などとの連携のプラットフォームの必要性などを提案されました。
その後、多くの委員の発言による意見交換が行われました。
その発言に共通していたのは、【リカレント教育】を通じて、学ぶ人、教える人、学び合う人々、学んだ人が活躍する場を提供している人々相互の【ウェルビーイング】を実現する方向性についての多角的なご意見でした。
【リカレント】教育を含む【生涯学習】が、学ぶ人の主体性に基づくとともに、その学びを還元する場の保障によって、すべての人の【ウェルビーイング】を実現する方向性を、引き続き、生涯学習分科会で検討していきたいと思います。