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第11回認知症にやさしいまち三鷹講演会と地域ケアネットワーク合同事業で認知症について学びなおしました

第11回認知症にやさしいまち三鷹講演会と地域ケアネットワーク合同事業で認知症について学びなおしました

11月18日、「第11回認知症にやさしいまち三鷹」に参加しました。
この事業は杏林大学医学部付属病院・東京都認知症疾患医療センター、認知症にやさしいまち三鷹事務局、三鷹市の共催事業です。
三鷹市公会堂さんさん館3階の1つの会場では、認知症関連団体の活動に関するパネル展示が行われています。
もう1つの会場では、第1部で、杏林大学医学部付属病院・東京都認知症疾患医療センター長の神﨑恒一教授による「認知症にやさしいまち三鷹実現に向けて、知ってほしいこと・あなたができること」と題する講演がありました。
神﨑先生は、まず、2023年6月に全37条からなる「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(通称:認知症基本法)」が可決されたことを紹介しました。
認知症基本法は、認知症の人も含めた国民全体で共生社会を作ることを目的として、認知症施策推進基本計画、基本的施策、認知症施策推進本部の設置などについて規定されていますが、国だけでなく、地方公共団体の責務などについての条文もあり、行政を通じて認知症の人が社会で活躍するための基盤を作っていくことが求められています。

神﨑先生は、この法律を踏まえつつ、何よりも、認知症にやさしいまちづくりにとって大切なことをわかりやすく説明してくださいました。
私なりに要約すると次のようなお話しでした。
何より大切なことは、認知症の人を差別しない、決して厄介者扱いしない、置いてけぼりにしないことです。
そして、相手のペースに合わせて、説明はわかりやすくするようにすることが必要で、特に表情と声色、目線の高さへの配慮は大事です。
認知症になると、認知機能、論理的行動には影響がみられますが、むしろ情動は研ぎ澄まされる傾向があります。
認知症の方が暮らしやすいように、生活環境はできる限り単純にすること、わかりやすくすることは、真の「バリアフリー」と言えるかもしれません。
具体的な事例として、認知症の方の社会参加を進める町田市の「Dカフェ」などの取組みを動画で紹介してくださり、こうした事業に参加する「認知症になっても私は私」「頼りにされると嬉しい」ということを明示する認知症当事者の方の前向きな姿が印象的です。
また、「オレンジドア三鷹」の利用者の当事者の方の生の声の紹介を通じて、「人間の尊厳・基本的人権の尊重」が基本中の基本であることを実感しました。
そして、神﨑先生は私たちに語り掛けます。
「認知症になっても大丈夫なように、私たちはどうすればいいでしょうか」と。
100歳以上まで生きたシスターマリーは、認知度は最後まで高い人でしたが、死後わかったことは、アルツハイマーであったのでした。
この事例のように、最近の医学論文では、「認知予備脳」が注目されているそうです。
すなわち、人は、「役割を持つ」「世の中のためになる」ことが認知症になる可能性を軽減しているのではないかというのです。
教育歴・職業・知的活動・余暇活動・身体活動・社会参加、対人交流などの要因が、認知機能低下症状を出にくくしている可能性が研究されているということです。
要するに、生きがいのある人は認知症になりにくい可能性があるのです。
働ける場、社会参加できる場、安心できる場、他者との交流がある場が、認知症の人にも、今はそうした症状があらわれていない人にも重要性が高いということです。

講演後、会場から数人の方から、認知症は予防できると考えるがその方法について、認知症当事者参加の重要性、若年性認知症は遺伝するか、軽度認知症の回復の可能性についてなどの質問が出され、神﨑先生から、1つひとつ丁寧な回答がありました。
私が市長在任中、杏林大学附属病院、三鷹市医師会、日赤武蔵野病院、武蔵野市医師会と両市の地域包括支援センター、三鷹市及び武蔵野市の間で、「もの忘れ相談シート」を活用した「認知症連携」の協定を交わして、連携活動を開始しました。
そして、杏林大学もの忘れセンターのセンター長でいらした神﨑先生にご相談して、「認知症にやさしいまち三鷹」の啓発事業を開始しました。
第1部の後、そうしたご縁のある神﨑先生を囲んで、みたか・認知症家族支援の会の石村巽さん、三鷹おれんじドア連絡協議会の成清一夫さんらとしばし対話しました。

第2部は、認知症に関する市内の活動についての発表です。
発表団体は以下の通りです。
〇三鷹おれんじドア連絡協議会
〇コミュニティ・ガーデン
〇みたか・認知症家族支援の会(みたかNFS)
〇家族介護交流事業
〇東京都多摩若年性認知症総合支援センター
〇若年性認知症支援団体としてのスリー・フォークス及びきんぎょ鉢・オレンジパートナー
〇笑ってげんき会(体操等を通した健康をめざすグループ)
〇みんなでうごこっか・みんなでうごこっかパート2(体操等を通した健康をめざすグループ)
市内にはこれらの団体のように、認知症基本法が制定される前から、すでに自主的に「認知症にやさしいまち三鷹」を推進する活動があります。
会場には、約100名の市民が参加して、自分事として認知症について学び、考え、具体的な活動についての情報を共有することができました。

この、「第11回認知症にやさしいまち三鷹」に先立って、11月13日には、三鷹市の地域ケアネットワーク合同事業があり、その際のテーマは「認知症とのかかわり方(ユマニチュードの考え方と活用)」でした。
講師は、ユマニチュードⓇ認定チーフインストラクターで調布東山病院看護師の安藤夏子さんです。
安藤さんは、認知症の人と接する際の「技術」4つの基本の柱について、「見る」「話す」「触れる」「立つ」を挙げました。
たとえば、「見る」時に、「愛・やさしさ・尊厳」を示すためには、「水平・正面・長い・近い」関係の持ち方が大切であること、「話す」ときに良い人間関係をつくるには、「穏やかに・歌うように・低めのトーンで」というようにです。
そして、その「4つの柱」の届け方には5つのステップがあると説明します。
1.出会いの準備、2.ケアの準備、3.知覚の凍結、4.感情の固定、5.再会の約束、です。
よい人間関係を築くには、1.来たことを知らせる、2.正面からの視線で目的をすぐに言わずによい言葉かけをする、3.やさしい目線で穏やかな声で目的のことを行い、4.良い印象をポジティブに確認して、5.次の約束をして別れるようにします。
私はこのユマニチュードの「技術」を学んで思いました。こうしたコミュニケーションの在り方は、決して、相手が認知症の人に限らないと。
私たちが地域で多様な活動を行う際には、相互性、対等性が大切です。
支援する際はその対象に対して、また連携・協働する際にはそのパートナーに対して、何よりも人間としての尊厳を尊重する態度が、常に大切であると思います。

こうしてこの1週間、「地域ケアネットワークの合同事業」と「第11回認知症にやさしいまち三鷹」への参加を通して、地域で活動する自分自身の在り方について、改めて謙虚に考える良い機会を得ることができました。

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