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阪神淡路大震災を忘れずに、県民のウェルビーイングの実現を目指す兵庫県庁を訪ねました

阪神淡路大震災を忘れずに、県民のウェルビーイングの実現を目指す兵庫県庁を訪ねました

1月17日は、私にとって忘れられない日の1つです。
それは、1995年(平成7年)1月17日5時46分52秒、兵庫県の淡路島北部沖の明石海峡を震源として、マグニチュード7.3で、犠牲者は後に6,400人以上にも達した大きな地震が発生した日だからです。

私は、この年は三鷹市内にあるルーテル学院大学の教員をしていましたが、当日、午前中はほとんど被災地の情報がないままに授業に臨んでいました。
お昼休みに近くの郵便局に出かけた時、郵便局に壁に設置されていたテレビのニュースでは刻々と震災情報が伝えられていました。
郵便局に数分滞在している間に犠牲者が10人単位で増えていく深刻な状況に驚愕し、大学にすぐに引き返して、午後の授業時に阪神淡路出身の学生に震災の情報を伝えて、すぐに家族の安否確認をするように伝令を発しました。すると、家族が被災した学生が数人いることがわかりました。
数日後に、兵庫県より大学を通して私に電話がありました。
その内容は、兵庫県は被災者支援を推進する「震災復興計画」を迅速に策定する必要があるのですが、県内の研究者の多くも被災者であり、県外の研究者である私にも協力してほしいとのことでした。

実は私はこの年の少し前に、兵庫県の地域情報化の取組みに参画した経過があるとともに、当時の郵政省の地域情報化の研究会の委員を務めていたことから、委員として特に情報通信基盤及び地域情報化に関する部分を担当してほしいいとのことでした。
メールや電話でのやり取りの後で、直接に現地に出向いたのは2月11日の寒い日のことでした。
県庁の会議室は暗くて、寒くて、凍えそうな中でしたが、県庁職員の皆様の誠実な取組みが、委員の心を熱くしてくれました。
ヘリコプターで上空を視察したとき、長田区の上空からみた広い火事の焼け跡や真っ青のブルーシートでほとんどが覆われた家屋の状況に言葉がありませんでした。
神戸港の周辺を歩いた時には「液状化」のすごさに当惑しました。
神戸市内では、大きな被害を受けた神戸市役所庁舎をはじめとして、地震による傷跡の深さに、心の傷跡の深さを重ねて胸が痛くなりました。
迅速な計画づくりをネットワークを駆使して進めて、3月末に「フェニックス計画」という名称の「不死鳥」のようによみがえることをめざす「震災復興計画」のとりまとめに参画することができました。
その後、建築家の安藤忠雄さんが立ち上げられ、実行委員長を務められた「阪神・淡路震災復興支援10年委員会」の委員として、兵庫県からの依頼は原則としてすべてお引き受けすることにしました。
たとえば、1997年から「ひょうご情報社会創生推進懇談会」委員、2000年から兵庫県「科学技術会議」委員を務めたほか、県の職員研修所の講師も務めました。
また、法務省人権擁護推進審議会で、当時の貝原俊民兵庫県知事と委員を務めました。

このように兵庫県とご縁のある私は、先日、医療、教育、所得等を統合した個人の状況を総合的に把握する統計の必要性や、国民・住民のウェルビーイング【Well-being】 に代表される主観指標について調査する総務省統計委員会の調査研究に関するヒアリングをするために、兵庫県庁を久しぶりに訪問しました。
兵庫県企画部計画課長の岩切玄太郎さん、副課長の松木保博さん、班長の諸岡歩さんと栂井冴斗さんが対応してくださいました。
兵庫県は、震災を経て、従来の計画行政の在り方を変えることとして、井戸敏三知事の就任を契機として、「兵庫の目指すべき社会像とその実現方向を明らかにするため、平成13(2001)年2月に『21世紀兵庫長期ビジョン』を策定しました。
そして、このビジョンの推進については、統計や事業量では測りきれない生活の質や豊かさを明らかにする、県民意識の変容を知ることが重要との考えのもと、主観指標である【兵庫のゆたかさ指標】(県民意識による指標)を設定し、ビジョンの実現状況の評価を行ってきています。
現在は2022年3月に、2050年ごろの兵庫の目指す姿を描く『ひょうごビジョン2050』策定しています。このビジョンの策定に際しては、10,000名を超える県民の声から「県民が共有する5つの社会と15の将来像」を描いています。
2050年の兵庫の姿を「誰もが希望を持って生きられる、1人ひとりの可能性が広がる『躍動する兵庫』」としています。
5つのめざす社会は以下の通りです。
Ⅰ 自分らしく生きられる社会
Ⅱ 新しいことに挑戦できる社会
Ⅲ 誰もが取り残されない社会
Ⅳ 自立した経済が息づく社会
Ⅴ 生命の持続を先導する社会
そこで、現在の「豊かさ指標」は、その将来像に関する全部で48項目の指標を収集し、直近では2023年7月に調査を実施して、2,172人(回収率44.2%)の有効回答数を得ています。
新たな指標の策定に際しては、内閣府や荒川区等の「幸福度指標」を参考にしたり、ウェルビーイング指標等の研究者から意見聴取しています。
兵庫県の調査の趣旨の文章に、兵庫県の行政のビジョンの趣旨が反映されています。
「この調査は、経済的な豊かさだけでない、地域の暮らしやすさなど兵庫の多様な豊かさを明らかにするために、毎年度、県民の皆様の意識や行動について具体的にお聞きするものです。こうした皆さま一人ひとりの“豊かさ感”を通して、県政指針「ひょうごビジョン2050」の実現状況を点検・評価するとともに、今後の政策立案に反映させることをねらいとしています。」
あの大震災から29年、久しぶりに訪ねた兵庫県庁で、私は県民の幸福度の向上をめざして熱心に取組む職員の皆様の熱意と温かい人間性を感じ、ほっこりとした前向きな気持ちになりました。

能登半島地震で今、まさに苦難の中にある皆様をお見舞いし、被災者の皆様と支援する皆様のご活動を心から応援します。
社会基盤の復興とともに、困難にある皆様の心の復興を伴うことを強く願います。

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