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大阪市で開催の『生きづらさを抱える子どもたち』についてのシンポジウムで講演しました

大阪市で開催の『生きづらさを抱える子どもたち』についてのシンポジウムで講演しました

令和5年度大阪府依存症早期介入・回復継続支援事業として、依存症リカバリー事業を担っている「特定非営利活動法人いちごの会」主催の市民講演会に講師として参加しました。
会場は、ドーンセンター(大阪府立男女共同参画・青少年センター)です。
シンポジウムのテーマは『生きづらさを抱える子どもたち』です。
まず、最初に私を含む3人の講師がそれぞれ講演をしました。
1.「こども基本法から、こどもたちの生きづらさを考える」 清原慶子
2.「自分を傷つけずにはいられない子どもたち」 松本俊彦さん(精神科医:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長/病院 薬物依存症センター長)
3.「子どもシェルターにたどりつく子どもたち」 森本志磨子さん(弁護士:NPO法人子どもセンターぬっくの初代理事長)

私は、講演でまず、「こども基本法」「こども大綱」について説明することを通して、「生きづらさを抱える子どもたち」を含む「全てのこどもの基本的人権が保障され、愛され、保護される」ことなどの理念を確認しました。続いて、日本の人口構造等を確認し、少子化・核家族化や、こども・若者をめぐるいじめ・不登校・自殺等の状況及び依存症の実態と対策を紹介しました。そして、特に、内閣府のデータ等により、地域に居場所を多く持つこどもは、自己実現や日々の充実感が相対的に高いことなどを報告し、依存症や被虐待など生きづらいこども達のを含むこどもたちのために、行政によるものだけでなく、民間による居場所づくりの取組みが有意義ではないかと話しました。

松本さんは、臨床経験や調査研究を通して、高校生のリストカットの比率が約1割であることからお話を始めました。リストカットの動機は①不快感情の軽減、②自殺の意図、③周囲へのアピール、④その他であり、リストカットは「死への迂回路」であり、「今の瞬間を生きのびる」ための行為だと説明します。リストカットする人は他者に相談できない、大切な家族や友人だからこそ相談できない。最近ではリストカットは薬物乱用を誘発し、当初は危険ドラッグが多かったところ、この頃は市販薬になっているということです。そして、高校生女子の自殺は高止まりしていることに注目するとともに、それと関連してリストカットの長期化は身体あるいは精神にとって急性の有害な作用が生じるほどの量の薬物を使用する「オーバードース」に結びついていることを紹介します。
こうして、「依存症(adiction)」は長期的には自殺の危険因子であるとはいえ、短期的には自殺の保護因子になっていること文科省あると説明します。
すなわち、「依存症(adiction)」と「回復(recovery)」は連続しているのであり、「気づき、関わり、つながり」を通して、性急な変化を求めるのではなく、緩やかに「生きててよかった」という存在の肯定をもたらすことが必要と語ります。

最後に講演され森本さんは弁護士で、2002年より社会的養護の当事者と支援者が一緒になって居場所活動や学習会等をおこなう「Children‘s Views &Voices(CVV)」のスタッフをしています。2012年からは自身が「週末里親」として子育てをしています。2016年4月にはNPO法人子どもセンターぬっくの初代理事長として虐待等により居場所を失った10代後半女子のための「子どもシェルター」を開設するとともに、翌年5月、「居場所のない子ども110番(電話相談)」を開始しています。2020年4月には自立援助ホームを新設しています。
森本さんが実践している「子どもシェルター」では、貧困、虐待などがあり、今日寝る場所がなネットカフェや友人宅を転々とするなど、居場所を失ったこどもたちの原則として15歳から19歳の女子の緊急避難場所であり、2か月間の自立援助をしています。こども一人に無償で担当弁護士(コタン)がついて、傷ついた心と体を休めて、新しい一歩を踏み出すまで寄り添っています。
そして、具体的な利用者の事例を紹介しつつ、こどもの人権を守る保護者がいない、あるいは保護者による人権侵害を受けていて、支援の制度のはざまに置かれている特に高校生女子の人権保障の在り方が問われていると語ります。こども基本法に定められてこどもが想いや意見を表明する権利の保障は、こどもだけでなく、大人も安心して生きる社会を創ることだと語ります。

3名の講演が終了した後で、 大阪府こころの健康総合センター所長の籠本孝雄さんの進行で、まずは3名の講師の間でやりとりをしました。私は、松本さんも森本さんも、「生きづらさを抱える子どもたち」というテーマについて、期せずして高校生女子をめぐる課題に焦点を当ててお話をされました。そのことについて、お2人に改めて具体例などを伺いました。
その後、会場の3名の方から質問をいただきました。その中に、高校生女子をはじめとする女性のこどもをめぐる問題の背景には、現代社会における女性の置かれている立ち位置が関係しているのではないかという問題提起がありました。
その方はスクールソーシャルワーカーとしての実践の中で、相談に来る保護者は圧倒的に母親であること、たとえば不登校などのこどものために仕事を辞めるのも母親であることが圧倒的に多く、思春期の女性にとっての母親たちの在り方による影響も強いのではないかという問題提起でした。
松本さんも、森本さんも、私も、特に高校生女子をめぐる課題と、現在の女性の自立や男女平等参画をめぐる実態との関連性が少なからずあることについての認識を答えました。

私が「依存症早期介入・回復継続支援事業」であるこのシンポジウムに参加したきっかけは、『下手くそやけどなんとか生きてるねん。』(現代書館)の著者で、シンナー、アルコール等の依存症により精神科の入退院を繰り返し、現在は「特定非営利活動法人いちごの会」のリカバリーハウスいちご長居の職員をしている依存症の当事者経験を持つ渡邊洋次郎さんとの出会いと、その依頼によるものでした。
渡邊さんは、シンポジウムの企画・運営を担当し、当日は冒頭の趣旨説明とシンポジウムで司会の籠田さんを補佐した終了後に、私に温言葉を寄せてくれました。
「今日は本当に貴重なご講演とシンポジウムでの分かち合いをありがとうございました。精神科医の松本俊彦様や子どもシェルターの森本志磨子様との分かち合いに清原慶子様にも加わっていただき、本当に有意義な時間になったと思います。個人的には今日のシンポジウムを実現したかったので皆さんの分かち合いを今日の場で開催させていただき本当に嬉しかったです。」と。
今回のシンポジウムの企画の際に、渡邊さんは私のホームページでコラムを読んで、依存症の問題を「こどもの視点」で、「こどもの立場」で考える必要性を認識されたことから始まりました
そして、私に「こども基本法」について説明する講師をしてほしいと思いついてくださったことを本当に幸いに思います。
この機会をいただいて、私は改めて依存症について学び、考えました。そして、こどもの視点でとらえなおす必要性を痛感しました。
私は、講演の最後に、参加者の皆様に、次のように語りかけました。

【おとなの皆さんへ】
 ●こどもの頃のしあわせな自分を思い出しましょう
  ●おとなの今、しあわせな時を増やしましょう
   ●おとなの今、しあわせではないと思う時を減らしましょう
【こども・若者の皆さんへ】
 ●しあわせだと思う時を、他の人と一緒に増やしましょう
  ●しあわせではないと思う時を他の人と一緒に減らしましょう
【ご一緒に考えましょう! 】
 ●今、私たちが生活する社会の状況は変えることができます
  ●今のこども・若者の実態や意識を直視しましょう
   ●私たちが立つべき理念を確認しましょう!
    ●私たちができること・すべきことを行動しましょう!

「こども基本法」の目的には、「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、こどもの心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、こども政策を総合的に推進する。」と明記されています。
この法律の言葉に魂を、実存を込めていきたいと思います。

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