【国立教育政策研究所シンポジウムに参加して:アートと社会教育が拓く地域の未来】
- 2025/12/15
- 日記・コラム, 訪問記録, 審議会・委員会等
- 社会教育, 国立教育政策研究所, 社会教育実践センター, 東京芸術大学, 日比野克彦, 社会教育主事, 社会教育士, 恵庭市, 三次市, 海士町, みんなの公民館まる
12月13日(土)、国立教育政策研究所主催・文部科学省共催のシンポジウムに参加してまいりました。
テーマは【これからの時代の社会基盤としての社会教育を考える〜今、なぜ社会教育なのか~】です。
国立教育政策研究所の社会教育実践研究センター設立60周年という節目の開催にふさわしく、会場となった文部科学省の講堂は、これからの学びの在り方を模索する熱気に包まれていました。
この日は、私にとって大変嬉しい「予期せぬ再会」がありました。
基調講演に登壇された、東京藝術大学の日比野克彦学長です。
実は、私が東京工科大学メディア学部の学部長を務めていた頃、日比野学長とご一緒に【FMジャパン(J-WAVE)】の番組審議会委員をご一緒に務めていたご縁があります。
私が三鷹市長に就任して退任してしまいましたので、それ以来となる大変に久しぶりの再会に、胸が熱くなる思いでした。
日比野学長の講演は、【アートの役割が変化してきている】というメッセージから始まる、ご自身の【地域での芸術祭】の実践に基づいた非常に力強いものでした。
「アートは人々に『生きる力』を与える」 「アートには、地域社会を創生し、地域内外の人の交流を促し、地域課題を解決に向かわせるチカラがある」
特に、【新潟県妻有アートトリエンナーレ】や【香川県瀬戸内国際芸術祭】のような中山間地や離島を含む地域コミュニティに入り込んで行われるアートプロジェクトの事例は、芸術が単なる鑑賞の対象ではなく、社会を動かす実践的なエネルギーであることを改めて確信させられる、示唆に富んだお話でした。
また、国立教育政策研究所の志々田まなみ総括研究官からは、社会教育主事や社会教育士等の配置・在り方に関する最新調査の中間報告が紹介されました。
全国の自治体における専門職の配置状況や、首長部局との連携実態など、こうした客観的なデータも、今後の政策を考える上で重要な羅針盤となります。
そして何より心強く感じたのは、会場に多くの【社会教育主事】【社会教育士】や志ある実践者の皆様が集い、熱気ある交流が生まれていたことです。
当日は、プログラムの前後や休憩時間中に、(一社)日本社会教育士会代表理事の鈴木麻里さんや理事の濱本武将さんをはじめ、相模原市の町田摩里香さん、川口市の岡田直人さん、市川重彦さん、目黒区の宍戸利圭さん、金沢市の石黒佳恵さん、日野市のあずま桜子さんといった各地で活躍される方々とお話しする機会がありました。
また、自治体の教育委員会からは福岡県の石津峰さん、大田区の齊藤祥子さんはじめ多くの職員の皆様、さらには次世代を担う横浜市立大学医学部生の富田潤さんとも対話することができました。
志々田研究官の報告にあるような地域での社会教育の「担い手」の方たちが、実際にこの会場に集い、これからの社会教育を我が事として熱心に語り合う姿に、制度を支え、創造する確かな熱量と未来への希望を感じました。
後半のシンポジウムでは、文教大学の青山鉄兵准教授による軽妙な進行のもと、3名のパネリストによる実践報告が行われました。
たとえば、登壇された2名の自治体職員の方――北海道恵庭市の藤野真一郎教育委員会教育総務課長と、広島県三次市の豊田庄吾教育委員会次長(初代隠岐国学習センター長)――が、真摯に、そしてユーモアを交えて、それぞれの住民の皆様との協働についてお話しされたことです。
豊田次長は島根県海士町での「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」についての創造的な取組みについて報告してくださいました。
お2人とも行政の現場にいる職員として、住民の皆様と創造的な取組みを、悩みつつも大いに楽しみながら実践に取り組んでいる姿に、会場からは度々笑い声が沸き起こり、その頼もしさに会場全体が引き込まれていました。
また、民間で社会教育を進める鈴木貫司センター長(NPO法人わかもののまち)による「みんなの公民館まる」の取り組みは素晴らしいものでした。
ここでは、自治体と地域企業の応援を紡ぎながら、こどもや若者を単なる「支援の対象」ではなく、自ら事業や活動を呼び起こし、実践する主体にする取組みに力を発揮しています。
まさに、自治体と民間との協働(コラボレーション)が必要な時代において、あるべきモデルの一つと言えるでしょう。
今回のシンポジウムを通じて、改めて強く感じたことがあります。 それは、社会教育を単なる行政の「制度」として捉えるだけでなく、地域コミュニティにおける「自治と民主主義の力」を育む、多世代による実践的な取り組みとして把握することの重要性です。
そこには、今回の日比野学長との再会のような「予期せぬ出会い」があり、計画通りにはいかないからこそ生まれる「予期せぬ効果」があります。
その中にこそ、社会教育活動の真の魅力と可能性があるのではないでしょうか。
だからこそ、活動の評価においては、数値に表れる「量的評価」だけでなく、出会いと交流による事業の過程において、どのような化学反応が起きたのかという「質的評価」が重要です。
そして、結果や成果だけでなく学習と活動と行動の「経過(プロセス)」を評価する視点が不可欠であることを再確認しました。
会場で出会った多くの社会教育士の方々や、こども・若者の参画が、これからの地域社会を切り拓く大きな力となる、そんな確信を強く抱いた一日でした。
終了直後、髙田課長と直前の地域学習推進課長であった高木秀人・千葉県市川市教育長とシンポジウムの意義などについて語り合いました。
開会中の会場での撮影は禁止されていましたので、終了後の会場で、記念の写真を撮影しました。
なお、シンポジウム終了後、主催者を代表して開会の挨拶をされた国立教育政策研究所の森田正信所長、文部科学省総合教育政策局の髙田行紀地域学習推進課長、閉会の挨拶をされた佐藤貴大社会教育実践研究センター長はじめ事務局の皆様と、シンポジウム登壇者の皆様との【心合わせの会(会費制)】に私もお声がけをいただき、参加しました。
その席で、改めて、登壇者の皆様と、【今、なぜ社会教育か】について、深められたことは、私の責務である中央教育審議会【生涯学習分科会】及び【社会教育の在り方に関する特別部会】の今後の審議に向けて、大いに生かしていきたいと思います。
清原慶子 Official Website
