【青少年教育施設等の「持続可能性」と「体験」の進化 ―第13回社会教育の在り方に関する特別部会での意見交換から―】
文部科学省にて開催された「第13回社会教育の在り方に関する特別部会」に、部会長として出席し、議事進行を務めました。
今回の主要テーマは、【青少年教育施設等における青少年体験活動の推進方策】について。
髙田行紀地域学習推進課長による論点の整理、【文部科学省国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会】委員を務められたお2人のゲストである、株式会社R.projectの代表取締役丹埜倫さんによる「自然の家の新しい姿」のご提案や、國學院大學の青木康太郎教授による「推進方策」についての発表を皮切りに、委員の皆様と非常に熱のこもった意見交換を行うことができました。
●青少年教育施設の「持続可能性」という課題
今回の議論で避けて通れなかったのが、青少年教育施設の「持続可能性」という課題です。 かつて青少年の家や自然の家として整備された多くの施設は、現在、老朽化が進み、維持管理が困難な局面を迎えています。しかし、これらを解決困難な課題としてしまうだけでは、こどもたちの豊かな体験の機会を奪うことになりかねません。
そこで重要となるのが、国、自治体、そして民間の連携です。
丹埜さんからの発表で示されたように、民間企業の視点を取り入れることで、施設が「宿泊機能重視」から、現代のニーズに合った魅力的な「体験拠点」へと生まれ変わる可能性があることが示唆されました。
民間の持つ柔軟なアイデアや運営ノウハウは、施設の稼働率を上げ、財政的な持続可能性を高めるだけでなく、プログラムの質的向上にも寄与する実績が提起されました。
●公民連携における「配慮」と「公教育」としての軸
一方で、公民連携を進める際には、慎重な配慮も求められます。
青少年教育施設は、学校教育、青少年教育、社会教育、公教育の一翼を担う場です。
そこで、収益性のみを追求するあまり、経済的な事情を抱えるこどもたちが利用できなくなったり、教育的な目的が薄れてしまったりしてはいけません。
「誰一人取り残さない」という公的な使命を守りつつ、民間の活力をどう融合させるか。
地域の実情に応じた丁寧な制度設計と、公民が対等なパートナーとして「こどもたちの成長」という共通のゴールを見据えることが、これからの施設運営には不可欠であると強く感じました。
●「体験」を超えて「活動の創造」へ
ハード面(施設)の議論とともに、ソフト面(体験・学習内容)についても、青木教授の提言などを踏まえ、本質的な議論がなされました。
これからの青少年教育においては、単に【自然体験】を提供するだけでは不十分であり、重要なのはその先にある【学習】と【体験】、そしてそこから生まれる【活動の創造】です。
こども若者は、教育や支援の「対象」ではなく、自ら考え、動き、何かを生み出していく「主体」です。
こども若者が「主体」としての力を発揮できる環境を整えることこそは重要な役割であることを再確認しました。
●地域ごとの実践、そして「大人」の変容
この日は、全国各地で活躍される委員の皆様から、地域に根差した具体的な事例が多く共有されました。
福島県の事例(安斎宏之委員)、岡山県倉敷市の事例(伊東香織委員)、北九州市はじめ九州の事例(古賀桃子委員)、新潟県の事例(小見まいこ委員)、名古屋市の事例(杉野みどり委員)、愛媛県の事例(関福生委員)、島根県の事例(野津建二委員)、鹿児島県の事例(東琴乃委員)、熊本県の事例(八木浩光委員)などです。 (順不同)
各地の実践から見えてきたのは、【指導者の専門性の意義】であり、【体験学習の重要性は、こどもだけのものではない】という事実です。
こどもたちの活動を支える保護者、教員、指導者、地域住民といった「大人」にとっても、自然体験・非日常の生活体験は重要です。
大人が共に学び、感動し、こどもたちの主体性に感化されて変わっていく、そうした【こどもまんなか】の視点と具体的な【多世代交流】の中にも、社会教育の意義があるのだと受け止めました。
この日の、少々予定時間を超えるほどの熱心な意見交換を通して、「自然の家」をはじめとする青少年教育施設は、ある場合には民間との連携により、持続可能な形へと進化しながら、多世代が交わり、新たな活動を創造する「地域の拠点」として再生していく可能性が確認されたように思います。
【文部科学省国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会】委員を務められた萩原なつ子副部会長、牧野篤副部会長、青山鉄平委員、柏木智子委員らからは、改めて【青少年教育】の概念の明確化、こども若者の参画の在り方なと、重要な視点が提起されました。
私は、特別部会の部会長として、委員の皆様の熱意あるご意見をしっかりと受け止め、これからの青少年教育施設のハード・ソフトの両面からの在り方を含めて、社会教育の在り方についてさらに審議を深めてまいりたいと思います。
清原慶子 Official Website
