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2019年度地域まるごとケアプロジェクト報告会に参加して

2019年度地域まるごとケアプロジェクト報告会に参加して

にっぽん子ども・子育て応援団主催「2019年度地域まるごとケアプロジェクト報告会」

にっぽん子ども・子育て応援団とは

2月8日午後、にっぽん子ども・子育て応援団(以下:応援団)の「2019年度地域まるごとケアプロジェクト報告会」が千代田区立日比谷図書文化館を会場に開催され、企画委員の一人として参加しました。

にっぽん子ども・子育て応援団とは2009年に「にっぽん子育て応援団」という名称で創設された団体で、発足当時、私は「厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会」の委員を務めていたことから、少子化対策は国や自治体が行政として進めるだけでなく、幅広い民間の結集が必要と考えて活動を検討・実施する企画委員を引き受けて参加しました。
その後「自治体首長のサポーター宣言」もしていました。
ただ、公務の為になかなか団長・企画委員会議に出席できなかったために数年前に退任していたところ、昨年三鷹市長退任後に団長・企画委員の皆様から復帰のご要請をいただき、光栄にも企画委員に再任しています。

にっぽん子ども・子育て応援団報告会の参加者と
にっぽん子ども・子育て応援団報告会の参加者と

応援団長(共同代表)は、堀田力・公益財団法人さわやか福祉財団会長、安藤哲也・NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事、勝間和代・経済評論家、樋口恵子・NPO法人高齢社会をよくする会理事長です。

昨年10周年を迎えて、名称を「にっぽん子ども・子育て応援団」に改称しました。

応援団の目標は、「すべての子どもたちが、家族の愛情に育まれ、また、子ども同士の積極的な関わり合いの中でそして、地域や社会の多くのおとなたちの慈しみの中で心豊かに成長できる環境を保障すること」です。
こうした目標に向けた応援団の活動は、子どもや子育てへの関心喚起、セミナー・シンポジウムの開催、企業・政府・政党などへの提案活動、子育てを応援する方法を考える、政党や自治体、市民団体とともに調査・研究を行う、地方版子ども・子育て会議の活用に関する情報発信などです。

にっぽん子ども・子育て応援団舞台
にっぽん子ども・子育て応援団舞台

今回の報告会は、2015年から公益財団法人さわやか福祉財団の委託を受けて実施している「地域包括ケアにおける地域連携の可能性を探り、既存制度にとらわれない地域福祉・地域づくりに向けた提案・周知啓発を子ども子育て分野から行う事業」の一環として開催したものです。
この間、担当者がヒアリング調査や地域人材交流研修会などで訪問した自治体は累積で52件となっています。
2019年度は、岐阜県大垣市、富山県南砺市と、砺波市・射水市の市民団体、岡山県総社市、広島県福山市を対象にヒアリング調査を実施し、北海道札幌市、山形県山形市、茨城県水戸市、福井県敦賀市、岐阜県大垣市、長崎県佐世保市で地域人材交流研修会を実施しています。

公益財団法人さわやか福祉財団理事長清水肇子さんの地域まるごとケアへの想い

公益財団法人さわやか福祉財団の清水肇子理事長と
公益財団法人さわやか福祉財団の清水肇子理事長と

報告会は、応援団企画委員のNPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長の奥山千鶴子さんの司会で進行しました。
最初に、調査研究の委託元である公益財団法人さわやか福祉財団の清水肇子理事長は、報告会の開会の挨拶で概要として次のように語りました。

本財団が発足して約30年の間に、少子高齢化の進展により、子どもも高齢者も益々地域の受け皿が必要となっています。
本財団の応援団への「地域包括及び子育て世代包括ケア先進自治体調査と地域人材交流研修会開催」に関する委託事業が開始された2015年以降を概観すると、「地域まるごとケア」が標榜され、介護保険でも、要支援1、2については地域での支援が柱として位置付けられるようになっています。

特に、子育て支援については、特に児童虐待等の諸課題が深刻化しています。
そこで、誰もが「自分ごと」と受け止めることが必要であり、地域での「共生」と「ごちゃまぜ」の在り方が特に重要になっています。

そして、同じく、2015年は、国連で「SDGs(持続可能な開発目標)」が加盟国に共有された年でもあります。
「誰ひとりも取り残さない」の理念は、地域包括ケアと重なり合います。

昨年大阪で、「いきがい・助け合いサミット in 大阪:共生社会をつくる地域包括ケア〜生活を支え合う仕組みと実践〜」を開催した際、子ども子育てのテーマを担当した応援団の企画には定員の200人は直ちに満席となりました。
改めて、今後は、特に「子ども子育て支援」を含めた「まるごとケア」が不可欠であり、にっぽん子ども・子育て応援団の活動が重要との認識を強くしました。

この約30年の間、さわやか財団が目指してこられた超高齢社会における全世代型の福祉が、地域、市民に根差したとりくみを目指すことが望ましいことを、清水理事長のご挨拶から再確認しました。

恵泉女学園大学学長大日向雅美さんの基調講演
「シニア世代 男性が子ども・子育て支援と出会うとき」のインパクト

恵泉女学園大学学長の大日向雅美学長と
恵泉女学園大学学長の大日向雅美学長と

私が大日向雅美さんと初めてお仕事をご一緒したのは、2007年12月26日に厚生労働省社会保障審議会に新設された「少子化対策特別部会」の部会長をされた大日向さんとともに、私が委員を務めた時です。
この特別部会は2009年12月9日まで30回にわたり開催されました。

この特別部会が設置された契機は、2007年2月6日に政府の少子化社会対策会議で決定された『子どもと家族を応援する日本』重点戦略の策定方針について」に基づき、基本戦略、働き方の改革、地域・家族の再生、少子化社会対策大綱等の点検・評価といった事項を検討するために設置された「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略検討会議」が12月にまとめた提言に基づくものです。

この検討会議の構成員は政府少子化社会対策会議委員の内閣官房長官・内閣府特命担当大臣(少子化対策)・内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・総務大臣・財務大臣・文部科学大臣・厚生労働大臣・経済産業大臣・国土交通大臣に加えて、民間委員として、池田守男(日本経済団体連合会少子化対策委員会委員長、日本商工会議所特別顧問) 、古賀伸明(日本労働組合総連合会事務局長)樋口美雄(慶應義塾大学商学部教授)吉川洋(東京大学大学院経済学研究科教授)ら学識者と共に、実は、当時三鷹市長であった私が委嘱されました。
この検討会議を契機に、政府と経団連と連合が協議を重ねて、現在の「働き方改革」の端緒ともなる「ワーク・ライフ・バランス憲章」がまとめられています。
そして、具体的な少子化対策を、福祉・医療・保育・教育等の専門家と知事会・市長会・町村会の自治体関係者が検討するために、「少子化対策特別部会」が設置されたのです。

大日向部会長のもとで、「家庭的保育」の充実や「母子保健」「幼保一体化」の重要性等が提起され、その後2015年に施行された「子ども子育て新制度」に向けた2010年からの「子ども・子育て新システム検討会議」及びそのもとでの作業グループによる検討へと展開していくことになりました。
大日向さんと私はその作業グループのもとに設置された「基本制度ワーキングチーム」、「幼保一体化ワーキングチーム」でも、ご一緒に検討に参画しました。

このように、子ども子育て新制度の発足の過程と今に至る深いご縁のある大日向さんの基調講演は、子ども・子育て支援に関する研究者としてのお立場のみならず、東京都港区等で子育てひろば「あい・ぽーと」を運営するNPO法人あい・ぽーとステーションの代表理事をされている実践に基づいたお話でした。

具体的には、大日向さんは、港区の指定管理を受けて、2003年に、「保護者に理由を問わない一時預かり施設」として子育てひろば「あい・ぽーと」を開設されました。
その際、保育士・幼稚園教諭のみならず幅広い人財の子育て支援への参加を進めたいと考えて、3か月間のカリキュラムで「子育て家族支援養成講座」を開始されました。
ただ、気が付けば、参加者の99%が女性で、子育てひろばが母親と女性支援員による女性だけのひろばになっていました。

そこで、大日向さんは団塊世代の男性に注目して、呼びかけを開始しました。
そのキャッチフレーズは「現役時代の名刺で勝負」というものでした。

男性対象の講座の名称は「子育てまちづくり支援プロデューサー」でした。
すでに、現在は8期生ということであり、男性たちは、現役を退いても社会とつながっていたい、若い頃には子育てをしなかった罪ほろぼし、妻に送り出された、などきっかけはいろいろな中で集まり、熱心に研修を受けました。
その後、現場に出たところ、「子育てまちづくり支援プロデューサー」改め「まちプロさん」として活躍しているとのことです。

大日向さんは本報告会で、「シニア世代男性が子ども・子育て支援と出会うとき」と講演タイトルを付けられましたが、私は大日向さんの講演から、「シニア世代男性を子ども・子育て支援と出会わせたとき」という実践事例であると受け止めて聞かせていただきました。
このまちプロさんの事例は、地域子育て支援における「老若男女共同参画」の確かな兆しと受け止めました。

「ごちゃまぜ 真剣 まるごとケア」を発信する市民のチカラ

報告会後半は、札幌市・岐阜市・砺波市から参加の報告者による「見えてきた!地域ぐるみで、みんなまるごとケアのヒント 市民発 ごちゃまぜ 真剣 まるごとケア」と題する事例報告と提言です。

北海道札幌市の「NPO法人子育て応援かざぐるま」代表理事の山田智子さんは、転勤者が多く、8割以上が身近に支援者のいない 「アウェイ育児」が多い札幌市で30年以上子育てひろば を展開している事例を報告されました。
雪が多く、冬に子連れの外出が難しい地域では、母親の不安は大きいと推測できます。そうした状況の中で、地域のよい意味での「子育てからの逃げ場」と「適切な相談の場」が必要です。

岐阜市の「NPO法人コミュニティサポートスクエア」理事長の松浦陽之助さんは、 2011 年1月からコミュニティ・カフェわおん(駄菓子屋を含む)拠点に活動を開始しました。
社会に一歩踏み出す勇気のない若者、社会に出たものの挫折や戸惑いで前に進めなくなった若者、希望が持てないと嘆く若者をはじめとして、生活困窮から抜け出せない家庭の子どもや、災害など自分の努力とは無関係に苦境にさらされる人たちが、明るい未来を感じて生きていってほしいと願って多様な活動を展開しています。
10年目となる「コミュニティ・カフェわおん」の実践を基礎に、最近では、「ゆーがたハウス」という「子ども食堂」にとどまらない発展的な形である「大人も子どももOK食堂」という、多世代に開く食堂の運営を目指しています。

砺波市の「一般社団法人Ponteとやま」理事の加藤愛理子さんは、水野カオル理事長と共同して2014年に法人を設立し、自宅を開放して「みやの森カフェ」を開設しました。
このカフェは、子どもから大人、障がい者を含む多様な人々が集まる居場所となっています。お二人とも姉妹に障がい者があり、特別支援教育に関わってきたという共通点があるとのことで、まさに「ごちゃまぜ」す。

これらの取組は、まさに、多世代、男女、障がい者等の人々が集い、飲み、食べながら、語り合い、つぶやき合い、ぼやき合い、加藤さんの表現ではまさに「ごちゃまぜ」の居場所の実践をしています。
『庭に小さなカフェをつくったら、みんなの居場所になった(つなげる×つながる ごちゃまぜカフェ)』というタイトルの、南雲明彦さん編著、宮の森カフェ著の本が、ぶどう社から発行されています。

3人の方の「市民発 まるごとケア」の実践を伺いながら、「地域まるごとケア」を進めるということは、地域住民の「多様性」を尊重して、ありのままに受け入れるということであり、日本語の表現では「ごちゃまぜ」そのものなのだと痛感しました。

「市民発 地域まるごとケア」を創り出す「自分ごと」「自立性」「自由」「自己実現」「自己啓発」「自治体との協働」

私はかねてから、「地域包括ケア」「地域まるごとケア」を考える際には、妊婦から長寿の方まで多世代が、女性も男性も、障がいのある人もない人もユニバーサルに、地域で生きやすい暮らしやすい環境を作り、支え合うしくみをつくることと考えていました。

そして今回、にっぽん子ども・子育て応援団主催「2019年度地域まるごとケアプロジェクト報告会」に参加して、私はいくつかの重要な視点をえることができました。
それは、期せずして「」という漢字で始まるキーワードです。

まずは、「自分ごと」という言葉です。
「地域まるごと」で考えるということは、地域で最期まで心身ともに健やかに暮らすための活動を、決して「他人ごと」と捉えるのではなく、すべての環境整備や制度運営を行政に委ねるのでもなく、「我がこと」「自分ごと」として、主体的に意識し、活動することが出発点です。

しかし、保健・医療・福祉・教育等の制度の隙間に目を向けて、社会福祉法人、NPO法人、財団法人、社団法人、任意団体、自主グループなど、市民発で活動をする際には、「自立性」「自由」が尊重される必要があります。
地域の実情に応じた柔軟な活動が創造されるためには、その自主性はもちろんのこと、自立性を尊重し、可能な限り自由な活動が保障されるしくみづくりが重要です。
寄付や行政の補助金制度が有用とされる場合には、自立性を尊重して、条件や規制が過度にならないように考える必要があると思います。

こうした市民発の地域まるごとケアの取組は、NPO法人の活動が目立つように、決して経済的な報酬は豊かではないと推測されますが、先行事例が示しているのは、支援される人も、支援する人も、参加者の「自己実現」が報酬のように感じられます。

その「自己実現」の為に、特に支援する人々が努めているのは「自己啓発」です。
研修、関係者の交流などによって、日々の活動への対応や発展のために必要な学びは、大学や専門学校等との連携により、充実する必要を感じました。

他方、自立的な「市民発」の活動であっても、「自治体行政との協働」の可能性はもっとあるように感じました。
特に、ごちゃまぜのカフェや「おとなも子どももOK食堂」の取組の事例からは、高齢者福祉、介護保険、後期高齢者医療、子育て支援、母子保健、若者支援、児童虐待対応、障がい者福祉、生活困窮者支援、特別支援教育など、幅広い部署との協働の可能性があります。
けれども、これらの部署の「ヨコ連携」は自治体によって相違はあるものの、まだまだ不十分であるように見受けられました。

「市民発 地域まるごとケア」の活動を尊重しつつ、行政の地域まるごとケアとの協働、最適な役割分担を創り上げていくためには、まだしばらくの「時間」がかかると予測されます。
その時間を短縮するためには、国民に対して、活動団体に対して、有効な「情報」の提供が必要です。
文字は異なりますが「」の付く文字が、やはりキーワードとなります。

 子ども子育て支援を含む、「市民発 地域まるごとケア」の取組に、私も、三鷹市の「地域ケアネットワーク新川中原」の推進委員・ボランティアの一人としても、考えながら活動していきたいと思います。

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