【いじめの重大化要因等の分析・検討会議】で座長をつとめています
2024年10月31日に公表された文部科学省『令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』において、2023年度の【いじめの重大事態】の発生件数は過去最多の1,306件であることが報告されました。
このことを受けて、同年11月8日開催の【いじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議】では、「いじめ防止対策の更なる強化について」を打ち出し、重大事態調査報告書を活用したいじめの質的分析のための専門家会議による検討が求められました。
これを踏まえ、重大事態調査報告書の分析を行い、分析の結果得られたいじめの端緒・予兆や重大化要因等を各学校の設置者、学校における未然防止等に活用することを目的として、こども家庭庁支援局総務課を事務局として、文部科学省との連携による【いじめの重大化要因等の分析・検討会議】が開催されています。
構成員は下記のとおりです。(50音順:敬称略)
新井 肇:関西外国語大学外国語学部教授
石川悦子:こども教育宝仙大学教授
清原慶子:杏林大学客員教授・前東京都三鷹市長
栗山博史:弁護士(神奈川県弁護士会所属)
澤田真由美:株式会社先生の幸せ研究所代表取締役
野澤和弘:植草学園大学副学長(教授)・一般社団法人スローコミュニケーション代表
村宮汐莉:地域・教育コーディネーター(就任時は大学生)
「いじめの重大事態」とは、『いじめ防止対策推進法』第28条第1項では、「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」事態及び「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認める」事態と定義されています。
すなわち、いじめによって児童生徒の生命、心身、または財産に重大な被害が生じる疑いがある事態を指しています。
第1回は2025年1月20日に開催され、こども家庭庁・吉住支援局長及び文部科学省・松坂文部科学戦略官より挨拶の後、私が座長に選任されました。
そして、いじめの重大事態調査報告書の分析の進め方、方法等について、報告書分析を通じて、いじめの重大化・長期化を防ぐために必要な未然防止、早期発見・早期対応のポイント等を明らかにするとともに、分析結果を整理し、各学校の設置者及び学校において研修等に活用できる成果物の作成や、報告書分析を通じて得られた知見等を踏まえ、こども向けや地域社会等にメッセージをまとめることなど、本会議で目指すことについて共通理解が図られました。
そして、5月19日に第5回目が開催され、いじめ重大事態調査報告書の分析を踏まえて、その要因や重大化を防ぐための【いじめの重大化・長期化を防ぐための未然防止、早期発見・早期対応に関する留意事項】についての意見交換を実施しました。
学校内における組織的対応などの取組みのみでなく、地域の関係機関との連携や保護者・地域と協働したいじめへの取組みについての意見交換が行われました。
これまでの経過としては、第2回(2月17日)では、2つの事例のいじめ重大事態調査報告書の分析を中心に、いじめの重大事態化の要因等が比較的類似すると考えられる合計11事例を対象として、いじめの重大事態化の要因や同種の事態を防ぐために必要なこと等について議論を行いました。
構成員及び分析実務担当事業者との間で、いじめに該当しうる行為が単なる児童生徒間トラブルと対応される背景、アンケート ・教育相談やそれ以外の場等でのこどもからのサインを受け止める工夫、学校での組織的対応の在り方、自傷行為等が把握された場合の対応、転校時の留意すべき事項、こどもの孤立感・喪失感を高める出来事などについて、幅広く意見交換を行いました。
第3回(3月13日)では、2つの事例のいじめ重大事態調査報告書の分析を中心に、いじめの重大事態化の要因等が比較的類似すると考えられる計9事例を対象として、いじめの重大事態化の要因や同種の事態を防ぐために必要なこと等について議論を行いました。
その後、学校内の多様な多職種の人材との協働の重要性、地域の専門機関等と連携したいじめ防止対策、こどもたちが発信する問題提起行動の捉え方、加害者指導の在り方、教職員と児童生徒の対等な関係性の在り方、SNSが関連するいじめ事案などについて、意見交換を行いました。
第4回(4月14日)では、2つの事例のいじめ重大事態調査報告書の分析を中心に、いじめの重大事態化の要因等が比較的類似すると考えられる計12事例を対象として、いじめの重大事態化の要因や同種の事態を防ぐために必要なこと等について議論を行いました。
その後、部活動やクラス替えのない小規模な学校等の人間関係の固定化により閉鎖的な場・環境になりやすい場合を考慮したいじめ対策、児童生徒が発信するSOSに対する向き合い方、いじめに気付いた児童生徒が安心して声を上げられる環境 ・ ルールづくり、いじめ行為を行った児童生徒への指導支援の在り方などについて意見交換を行いました。
いじめを防止することとともに、いじめ重大事態が発生しないように適切な対応をするためには、学校内の教員の取組みに加えて、保護者、関係機関、地域社会の幅広いいじめに関する関心と理解と予防及び対応に向けた気運醸成と具体的で適切な取組みが求められています。
そのことは、決して容易ではありませんが、引き続き、座長として、構成員の皆様とご一緒に真摯に取り組んでいきたいと思います。



