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湯浅誠さんが講師をつとめた「地域の居場所づくり」に関する公開講座を聴講しました

湯浅誠さんが講師をつとめた「地域の居場所づくり」に関する公開講座を聴講しました

私が評議員を務めている「公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所」は『都市問題』と題する機関誌を発行しています。
この財団は2022年に創立100周年を迎え、この機関誌も創刊以来100巻を超えています。
私は大学院で地域メディアやコミュニケーションの視点から地域社会学を専攻していた頃から、この『都市問題」のバックナンバーを図書館で閲覧して学んでいました。
その『都市問題』を記念した第55回「都市問題」公開講座が「地域の『居場所』をつくり、はぐくむ」をテーマに2024年2月3日に開催されました。

プログラムは下記の通りです。
基調講演 :湯浅 誠さん(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長、社会活動家、東京大学特任教授)
パネルディスカッション:
今井 紀明さん(認定NPO法人D×P 理事長)
勝部 麗子さん(豊中市社会福祉協議会事務局長(コミュニティソーシャルワーカー))
木村 満里子さん(神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会 理事長)
田中 康裕さん(合同会社Ibasho Japan 代表)
坂本 治也さん(関西大学法学部 教授)<司会>

私は主催団体の評議員であるとともに、基調講演を担当された湯浅誠さんが理事長をされている認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの顧問をさせていただいることもあり、聴講に伺い、湯浅さんとも新年を迎えて初めて対話しました。
湯浅さんは、今、なぜ「居場所」が注目されているのかについて、まずは、空き地、広場、駄菓子屋さんのような身近な地域社会でのこどもたちの居場所が減少したことなどをはじめ、大人にとっても商店街の衰退、近隣の家族の行ったり来たりといった関係の減少など「結果としての居場所」の減少を踏まえて、こども食堂をはじめとする「目的としての居場所づくり」が必要となってきた状況について説明されました。
そして、時代は「しがらみ」から「個人」主義へと動き、さらに「個人」主義とは「孤立」「孤独」へな移行の課題が顕在化し、2010年の「無縁社会」への注目から2011年の東日本大震災への対応を経験して、改めて日本社会は「つながり」の意義を共有してきているのではないかと語ります。
このトレンドはしばらく続くと思われ、こども食堂、ブックカフェ、住宅開発と地域交流室の併設などが同時多発的に発生しているのではないかと語ります。
そして、東京都営住宅の取組み、SOMPOケアによる全介護施設によるこども食堂の取組みによる多世代交流の推進などの自治体や企業の取組みを紹介されました。そして、2023年12月22日に閣議決定されたこども家庭庁の「こどもの居場所づくりに関する指針」の理念を踏まえて、より多くの子に
よりたくさんの居場所を「どこも」と、どんな子にも少なくとも一つの居場所を「どこか」が、必要であると語ります。
したがって、居場所つくりは実は地域づくりであり、社会の基盤づくりであると語ります。

それを実証的に示したのが後半のパネルディスカッションです。
今井さんは、特に居場所のない若者を支える取組を中心に「現場報告~大阪・グリ下に集まる若者のユースセンター」について、勝部さんは日本初のコミュニティソーシャルワーカーとしての実践を踏まえて「生活困窮・社会的孤立を支えるすべての人に居場所と役割を、一人を支える居場所づくり」について、木村さんはワーカーズ・コレクティブの取組みを「地域の『居場所』をつくり、はぐくむ」について、田中さんは合同会社IBASHO JAPANの取組みをもとに「居場所への関わりを通して教わったこと」について、それぞれの具体的な実践からの報告をされました。
登壇者の報告の後には、「自分には居場所がない」ことを自嘲気味に自己紹介された関西大学の坂本さんの軽妙な進行で、会場の参加者とのやりとりが行われました。
その内容は、町会・自治会とNPO等との関係の現状や今後の展望、居場所づくりの目的と実態は必ずしも一致しないこと、組織の活動における多様な人財の参加の在り方、居場所づくりにおける自治体の役割など、参加者の皆様の御質問に登壇者の皆様が熱心に回答され、居場所づくりに関わる多様な視点・論点が明らかになりました。
今年の4月に「孤独、孤立対策推進法」が施行される今、改めて、人間にとっての「居場所」の意義について、考えてみる契機を与えてくれた講演会でした。
当日の資料はすでに,ホームページにアップされていますし、講演会の模様は、今年の4月末までアーカイブ動画を視聴できます。

https://www.youtube.com/watch?v=tjFZRHRYwQU&t=726s

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