【共生社会の実現に向けた障害者・外国人等を含めた社会教育の推進方策】についての意見交換
文部科学省中央教育審議会生涯学習分科会には【社会教育の在り方に関する特別部会】が設置され、私は部会長を務めています。
特別部会は、2024年6月25日に中央教育審議会総会で文部科学大臣から諮問された【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】に応えて、適切で充実した答申案をまとめる方向で意見交換を重ねています。
今期に入り、5月から再開された特別部会には、全国市長会の社会文教委員長の都竹淳也・飛騨市長に代わって、中核市市長会顧問で全国市長会こども子育て担当の元副会長である伊東香織・倉敷市長が就任されました。
6月に開催された8回目の特別部会の後で、特別部会長として、文部科学省の藤原章夫事務次官と面談し、現在までの審議経過と今後の予定を報告しました。
藤原事務次官は、4年前の2021年9月から中央教育審議会及びその中の特に生涯学習分科会を担当する【総合教育政策局長】をされていました。
そして、その際に、【社会教育法】が制定70年余りを迎え、少子長寿化の進行の中でコロナ禍に直面するなど、特に地域社会の激動の中にあって、社会教育の在り方を再検討する必要性を語り合う機会を持ちました。
その後、総合教育政策局長に藤江陽子さん、そして望月禎さんが就任される経過にあって、局長はじめ生涯学習・社会教育担当者は生涯学習分科会の審議に共にいるとともに、各期の審議のとりまとめを引き継ぎ、生涯学習分科会の正副分科会長と、折々に対話の機会を重ねてきました。
そして、2024年に、文部科学大臣による諮問があったことになります。
6月の第8回目の特別部会の主な審議事項は、①社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策、②社会教育活動の推進方策、③国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方、です。
①については、今年の3月までに一定のとりまとめをしており、5月以降は②社会教育活動の推進方策についての審議を開始しています。
具体的には、地域と学校の連携・協働の更なる推進方策、公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策、青少年教育施設等における青少年体験活動の推進方策、地域コミュニティに関する首長部局の施策や多様な主体が担う活動との連携・振興方策、共生社会の実現に向けた障害者・外国人等を含めた社会教育の推進方策などの検討を予定しています。
そして、6月の特別部会では【共生社会の実現に向けた障害者・外国人等を含めた社会教育の推進方策】を議題として、まず、【(一財)熊本市国際交流振興事業団】常務理事の八木浩光委員から【外国人住民を巻き込んだ地域での多様な学び】について、熊本市での事例を含めて発表していただきました。
八木委員は、【外国人住民を含め多様な人たちが支え合い、活躍する共生社会を構築すること】すなわち【地域社会のウェルビーイング推進】を目標として、外国人が同じ地域の住民として定着する社会 (持続可能な社会づくり)を進め、比較的若い世代の外国人住民が支援者(担い手)として活躍する社会へシフトし、多様な人たちが活躍す多文化共生のまちづくりを実現するための人財の必要性を提起しました。
続いて、今年創立60周年を迎えている【国立教育政策研究所社会教育実践研究センター】の佐藤センター長から【共生社会の実現を推進する社会教育とボランティアに関する調査研究】について発表していただきました。
本調査は、2020年の第10期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理【多様な主体の協働とICTの活用で、つながる生涯学習・社会教育~命を守り、誰一人として取り残さない社会の実現へ~】及び2022年の【障害者の生涯学習の推進を担う人材育成の在り方検討会」議論のまとめなどに基づいて、【障害者の生涯学習推進を担う人材の育成・活躍を促進するための方策】を検討するために、質問紙調査(社会教育行政調査・社会教育施設調査)とヒアリング調査を実施したものです。
その後、髙田・地域学習推進課長から、【共生社会の実現に向けた障害者・外国人等を含めた社会教育の推進方策】について概要を整理するとともに、意見交換の論点として、①・社会教育分野における障害者や外国人等の学習機会をどのように充実させるべきか、②福祉関係者や民間団体等の地域における関係者と、社会教育の連携をどのように図るべきか、に絞って提起しました。
やその後、共生社会について研究を深めている立命館大学の柏木智子教授に、共生社会を考えることはすべての人の基本的人権や尊厳を保障することであるという理念を含めて、共生社会についての考察の口火を切っていただき、ほぼ全員の出席委員による意見交換が展開しました。
私は、萩原なつ子副部会長、牧野篤副部会長はじめ、皆様のご意見を伺っていて、私は【共生】を考えることを通して、社会のいわゆる常識・偏見・思い込みを見直し、真の公平の実現をはかる必要があると思いました。
社会においてすべての人のウェルビーイングを実現するという理念に基づき、多様性を受け入れつつ、私たちの常識を問い直し、多様性を尊重しつつ、外国人や障がい者の皆さんを対象としてだけでなく、学習と活動の主体として検討する姿勢の意義が確認されたように思います。
同時に、小田切徳美明治大学教授が、文科省のみならず、他の府省省庁の地域づくりの取組みにも着目して、防災や福祉を含む課題の解決に取組む地域づくりにおける社会教育の在り方を考える必要性を実感しました。
そして、この日は、正副部会長と事務局で相談して作成した下記のような今後の特別部会の審議日程についても報告しました。
〇2025年7月~12 月「審議事項2 社会教育の推進方策」の検討
〇2026年1月~3月「審議事項3 国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方」の
検討
〇2026年4月~5月 審議のまとめ(案)その後パブリックコメント
〇2026年夏頃 答申(案)
こうして、私たちの地域社会が直面する諸課題の所在を直視し、解決に向けて、多様な主体が真摯に学び、交流していく機会としての社会教育の在り方が、今、問われているのです。
答は容易には見つからないと思いますが、特別部会の意見交換には多くの傍聴者の方が傾聴していただいています。
議事録についても、多くの方が読んでいただいています。
今後も、多くの多様なご意見や実践を反映して、特別部会の取組みを進めていきたいと思います。

