【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所】の視察(その2)
先日、横須賀市にある【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(略称NICE)】を訪ねた日は、幸い、所内の会議があったことから、各部門の皆様がお揃いでした。
そこで、NICEが取り組んでいる①研究活動、②研修事業、③情報普及活動、④インクルーシブ教育システム推進のための地域支援事業・国際的同校の把握や海外との研究交流・インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データーベース)の運用などの、各部音の取組みについて、担当者の皆様からのご説明を受けることができました。
最初に【インクルーシブ教育システム推進センター】を訪問し、久保山茂樹センター長にお目にかかりました。
【インクルーシブ教育システム】とは、【障害者の権利に関する条約】第24条によれば、【人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が一般的な教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要】とされています。
【障害者差別解消法】は【障害を理由とする差別の解消を推進し、もってすべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資すること】を目的として制定されており、この目的を達成するために民間事業者と行政機関等に①不当な差別的取扱いの禁止、②合理的配慮の提供、③環境の整備3つの義務を課しています。
【合理的配慮】には明確な定義がありませんが、教育において障がい者の社会的障壁の除去のために必要かつ合理的な配慮についての具体的内容の例示が求められます。
そこで、本センターは、地域や学校現場におけるインクルーシブ教育システムの構築を強力に支援することを目的に、【教育委員会や学校が直面する課題の解決に資する研究】【国内外の最新情報の発信】【地域や学校に役立つ情報提供や支援】に取り組んでいます。
具体的には【合理的配慮】の実践事例を約600件紹介する【インクルDB】という略称で呼ばれるデータベースを作成しており、その研修会も開催されています。
インクルーシブ教育についての国際交流も行っていて、2025年3月18日には【フランス国立インクルーシブ教育高等研究所(INSEI:Institut National Supérieur de Formation et de Recherchepour l’Education Inclusive)】との間で、 研究協力・交流協定を10年ぶりに再締結し、更新しています。
次に、訪ねたのは、【発達障害教育推進センター】の展示室です。
説明してくださった長江清和センター長は、ご自身がNICEの研修を契機に発達障害のこどもたちへの支援について学び、大いなる関心と問題意識を持ち、ご自身の研究テーマに【発達障害教育推進】を明確に位置付け取組み、現在はセンター長をおつとめとのことです。
まさに、NICEの事業に参画した教員が、発達障害児のための教育についての研究と実践の担い手になられていることを心強く思います。
展示されている発達障害の教材や学習支援の工夫は、すべてのこどもたちにとって有意義なものであると認識しました。
また、お隣の【教育支援機器等展示室:iライブラリー】を視察しました。
ここは、障がいのあるこどもの教育ニーズに応じた支援を実現する教育支援機器やソフトウェアの展示室です。
実物をみることは極めて有用と思いました。
さらに、【ICT活用実践演習室:あしたの教室】という主としてICTを有効に活用するための教材や具体的な教室の備品等の取組みも視察しました。
ギガスクールの普及とともに、タブレットが一般化する中にあって、それを有効に活用するためには、教員も児童生徒の立場で、教室の席に腰かけて、【あしたの教室】で研修を受けることが有効と感じました。
最後に【スヌーズレン・ルーム】という部屋に行きました。
【スヌーズレン(Snoezelen)】とは、障がいのある人とその支援者が共に活動するときの理念とその実践法をさす言葉ということです。
オランダ語が語源ということで、【探索】と【リラクゼーション】の両方を意味することばとのことです。
そこで、この部屋には、【ウオーターベッド(ミュージック・バイブレーション付き)】、【バブルユニット:筒の中の液体に気泡が舞い上がり振動】、【ルミスター・ジャンボ:筒の中の液体と金属片が舞う】【サイド・グロー:光ファイバーの束】などが展示されています。
この装置は、特に発達障害児と保護者に好評で、毎年の施設公開日には、必ずこの部屋を訪問するリピーターがいるとのことです。
私も、ウオーターベッドに横たわってみました、確かに、リフレッシュする
さて、NICEは、7月4日(金)に九州・沖縄地方における教員養成び拠点大学の1つである福岡教育大学に於いて、NICEと大学との連携・協力協定が締結されたとのことです。
協定締結の際に、福岡教育大学の飯田学長からは、福岡教育大学の特別支援教育への取組みが全国の教員養成大学、教育学部のモデルとなるように努めるとの発言があったとのことで、特別支援教育・インクルーシブ教育のナショナルセンターであるNICEとの連携は大変に有意義であると思います。
【日本国憲法】第26条には、【すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。】等と定められています。
【教育基本法】第4条(教育の機会均等)には、【すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。】等と定めています。
【障害者基本法】第16条(教育)には、【国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。】と定められています。
これらの法律に基づく教育を実現するためには、それを支える調査研究及び具体的な方策等の支援が不可欠です。
NICEの取組みの更なる充実を期待します。



