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【舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』】を鑑賞して気づいた魔法つかいでも直面する親子の葛藤と愛情

【舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』】を鑑賞して気づいた魔法つかいでも直面する親子の葛藤と愛情

8月の三連休のまんなかの8月10日、私は家族三世代で舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を鑑賞しました。
東京メトロ千代田線の赤坂駅を降りると、TBS赤坂ACT劇場に続く道は【ハリーポッター】一色です。
2022年7月の開幕以来、4年目を迎えているロングランで、すでに観客動員数は120万人を超えているそうです。
この舞台は、1つの役に数名のキャストが交代で演じていることから、その回によってキャストの組み合わせは多様となり、何回鑑賞しても常に新鮮とのことです。
そこで、私の娘と小学生の孫たちはすでに数度鑑賞しています。
私は、ようやく、4年目で最初の鑑賞となりました。

この舞台のストーリーは、【ハリー・ポッター】シリーズの原作者・J.K.ローリングが自ら演出家のジョン・ティファニー、脚本家のジャック・ソーンとともに創作したオリジナル・ストーリーとのことです。
これまで、ロンドン、ニューヨーク、ハンブルグで上演されているとのことで、東京公演はTBS、HORIPRO、ATG Entertainmentの3社が主催しています。

私はいくつかの映画ハリー・ポッターを見たことはありますが、それは闇の魔法使いヴォルデモートに両親の命を奪われたハリー・ポッターが、ホグワーツ魔法魔術学校に入る資格があるとのことで、そこで学びながら、多くの冒険をする話でした。
舞台でのストーリーは、ハリーの同級生のロン、ハーマイオニーが魔法界を救ってから19年後ということで、魔法省で働くハリー・ポッターはいまや三人の子の父親になっていました。
社会では不穏な事件が続き、人々が不安になっている中で、次男のアルバス・ポッターがホグワーツ魔法魔術学校に入学する時を迎えている場面から舞台が始まりました。
アルパスは、魔法使いとして優秀で、今や魔法省に勤めているハリー・ポッターの家に生まれた自分の運命に戸惑い、反抗的です。
しかも、アルバスが魔法学校の入学式に向かうホグワーツ特急の車内で、偶然出会ったのは、父ハリーと犬猿の仲であるドラコ・マルフォイの息子、スコーピウス・マルフォイだったのです。
その後、この二人が父親同士の不仲とは異なり、仲良く協力して、時代を超える道具を使いながら、暗闇の支配から社会を守っていくことになるのです。

舞台では、キャストそれぞれが魔法を使うときに、実際の炎や光をタイミングよく駆使して、まさに、実際の魔法をみているような気持になります。
私は客席の端の方の席でしたが、比較的前の方の席でしたので、炎の熱を感じるほどでした。
休憩をはさんで3時間40分の演劇で、私が印象的に思っているシーンは、次男のアルバス・ポッターが「パパがぼくのパパでなかったらよかったと思ってる」というと、ハリー・ポッターが思わず「こっちだっておまえが息子でなかったらよかったと思っている」と言い合ってしまうシーンです。
そして、2人は、それぞれにこの言葉を言ってしまった自分を後悔し、その後の【時間を超えた旅】を通して、それぞれにそのことばを回収するような行動をしていくのです、

父親に反抗的な態度を取る息子に対して、幼い頃に両親を亡くしたハリーは、父親としての振る舞いが分からないと嘆くシーンもあります。
だからこそ、私はハリー・ポッターと犬猿の仲だったはずのドラコ・マルフォイが言ったこのセリフが忘れられません。
脚本とは異なるかもしれませんが、趣旨はこのような内容です。
「子育ては難しいとよく言われるけれど、むずかしいのはむしろ親自身が育つことだ。親になること、どういう親がいいのかをわかることの方が難しい」と言ったのです。

この舞台は、これまでにイギリスの演劇界の最高名誉であるローレンス・オリヴィエ賞、アメリカの演劇界の最高名誉であるトニー賞をはじめ、多数の演劇賞を世界中で獲得しているそうです。
たしかに、脚本の魅力はもちろんのこと、複数の階段やドアをはじめとする舞台装置の滑らかな転換、魔法を描く炎や光の機材の工夫など、大道具・小道具の繊細さも素晴らしかったです。
そして、何よりも、厳しいオーディションを勝ち抜かれた日本オリジナルキャストの皆様の演技力とテンポの良い会話、時々客席に笑い声が沸き起こるユーモア溢れるやりとりなどに惹き付けられました。

現在、主役のハリー・ポッターは稲垣吾郎さん、平岡祐太さん、大貫勇輔さんが演じられています。
私が出かけたこの日は、大貫勇輔さんが爽やかに演じていました。
その他のキャストは以下の皆さんです。(敬称略)
ハーマイオニー・グレンジャー 松井玲奈
ロン・ウイズリー       ひょっこりはん
ドラコ・マルフォイ      姜 暢雄
ジニー・ポッター       白羽ゆり
アルバス・ポッター      福山康平
スコーピウス・マルフォイ   浅見和哉
デルフィー          乃村美絵
マクゴナガル校長       白木美貴子
エイモス/ダンブルドア/スネイプ市村正親

もちろん、若い俳優の皆さんの生き生きとした演技に元気をもらいましたが、3つの役を演じられた市村正親さんの演技には円熟さを感じるとともに、この舞台全体に重厚さをもたらしていると感じました。

こうして、魔法も、音楽も、【体感】できる舞台を通して、ハリー・ポッターシリーズのすべてを読んではいない、ほとんどハリー・ポッターに詳しくない私にとってもハリー・ポッターの世界を楽しめました。
加えて、魔法つかいのハリー・ポッター親子の、親子としての葛藤と、だからこその強い愛情に惹きつけられた舞台と言えます。

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