【文部科学省高等教育局長の合田哲雄さんとの対話はいつも前向きな改革志向】
2025年7月の文部科学省の人事異動で、1000日以上在任された文化庁次長から【文部科学省高等教育局長】に就任された合田哲雄さんを訪問して、対話しました。
合田さんと初めてご一緒にお仕事をしたのは、私が三鷹市長在任中に【文部科学省中央教育審議会委員】として、【初等中等教育分科会】に設置された【学校における働き方改革特別部会】の委員を務めていた時でした。
これは2017年6月22日に、【新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について】の文部科学大臣からの諮問を受けて、重点的な審議をするために設置されたものです。
特別部会の審議は2017年7月11日(火)に第1回が開催され、翌月の8月19日には【緊急提言】として、①校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること、②全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと、③国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること、の3点を提起し、その後、2019年1月11日の第21回まで回を重ねました。
合田さんは、特別部会設置翌年の2018年1月に初等中等教育局の財務課長に就任され、特別部会の事務局として活躍されることになりました。
ほぼ毎月会議が開催される際には、私は現職の市長として議題の要点を理解し、的確に意見を述べるために、合田さんとの対話の時間をいただきました。
そして、2018年12月6日の第20回会議で【答申案】が審議される際に、最後に、私は次のように発言しました。
「今回の答申のユニークな点は、『工程表』がある点ですし、『フォローアップの重要性』が記述されていることです。自治体でもPDCAは欠かせません。しかもいつ頃までに法律を改正し、条例を自治体が作るかという目安なくして実行性はないと思います。ただ、【給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)】についてはもう少し時間がかかるような感じもしておりますし、一年単位の変型労働時間制につきましても2021年度となっておりますが、やはりそうであるならば、さらに中教審で今後これを議論するような仕組みを、是非是非条件整備していただきたい、これは要望です。」と。
その後、私は中央教育審議会委員を継続させていただいていますが、初等中等教育分科会には所属しなくなりました。
けれども、初等中等教育分科会では、【学校における働き方改革】は継続して審議が行われており、2025年7月に、【公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(給特法)】等の改正法が成立しました。
今回の法改正は約50年ぶりとなる教職調整額の改正であり、従来の4%から10%に上昇しました。
合田さんとは、2019年に財務課長でいらした時に、「いずれ給特法の改正をめざしたいですね」と話し合ってから6年、その改正が実現した直後の今年の7月に、合田さんは文部科学省に戻られたことになります。
合田さんは、高等教育局長としての抱負を次のように話されました。
高等教育局では、今年2月の【我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(知の総和答申)】を踏まえて、デモクラシーを支え、社会構造や若者のニーズに対応した大学・大学院教育、世界をリードする研究力の強化、地域活性化の戦略本部としての地方大学の機能強化、高専の積極的な活用、大学病院の経営支援、高校と大学の接続、奨学金など高等教育の費用負担の軽減などに全力を尽くしたいと思いますと、すでに、幅広い視点から高等教育の改革を見通されています。
本当に、心強い限りです。
また、合田さんは、2008年学習指導要領の担当をされ、2017年には初等中等教育局の教育課程課長として、2度にわたり【学習指導要領の改訂】にも携われたご経験をお持ちです。
合田さんは、財務課長の後、科学技術・学術政策局政策課長を経て、【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官】をされました。
その時には、合田さんが事務局として支えられた内閣府【総合科学技術・イノベーション会議(CSTI、議長・岸田文雄首相)】が2022年6月にまとめた【Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ】が大きなインパクトをもたらしました。
その内容は、中央教育審議会総会で当時の合田審議官が報告されて、委員で内容を共有しました。
その内容は、社会や教育のデジタル化における人材育成について、【社会に開かれた学び】、【児童生徒が主体となる対話的・協働的な学び】という学校教育の今の流れを生み出しました。
今後は、高等教育局長という文部科学省の幹部のお1人として、現在、検討が進められている学習指導要領の改訂に参画されることになります。
合田局長は、次期学習指導要領は、1人1台のGIGA端末が整備されたもとで初の改訂となること、しかも2021年12月に閣議決定された【デジタル社会の形成に関する重点計画・情報システム整備計画・官民データ活用推進基本計画について】のもとでは、あらゆる行政サービスでサプライ(供給)サイドからデマンド(需要)サイドへの転換が求められること、府省庁間も含めた縦割りを乗り越えて、【こどもというデマンドサイドに立った改訂】を目指すことの意義を認識されています。
この日、本当に短時間の対話でしたが、生涯学習分科会長としては、たとえば【リカレント教育】や【地域コミュニティの基盤としての社会教育】について検討する際、中央教育審議会では大学分科会との連携は不可欠ですし、高等教育機関と生涯学習・社会教育の垣根を超えた取組みの必要性を共有させていただき、心強く思いました。
また、医学部・保健学部を擁し、附属病院を経営する杏林大学の客員教授としては【大学病院の経営支援】を高等教育局の重要な課題として設定していただいていることに敬意を表します。