【すべてのこども・すべての人のための教育を保障することの大切さ】
私は、三鷹市長退任後、今年までの数年間、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課の依頼を受けて、【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の評価等に関する有識者会合】の委員を務めており、8月初旬に開催された今年度の会議では昨年度に引き続き座長を務めました。
文部科学大臣は、この独立行政法人の主務大臣として、各年次及び中期目標期間における業務の実績に関する評価を行う必要があります。
そこで、有識者は第三者の立場でそれぞれについて個別評価を行うとともに、会議を通して、文部科学省としての適切な評価に貢献する役割を果たします。
有識者会合では、【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所】の令和6年度及び第5期中期目標期間の取組みは大変に着実なものであり、総合的に優良であるとの評価をすることができました。
そして、有識者会合の審議を参考にして、文部科学大臣の評価がまとめられ、8月29日に、文部科学省のホームページの【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所】において、【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の令和6年度における業務の実績に関する評価】及び【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の第5期中期目標期間の終了時に見込まれる業務の実績に関する評価】が公表されました。
私は、有識者の1人として一定の責任を果たせたことに安どしています。
【独立行政法人】は、【公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務・事業のうち、国が直接実施する必要はないが民間にゆだねると実施されないおそれのあるものなどを実施する法人】です。
本研究所のように【中期目標管理法人】の場合は、【主務大臣は、達成すべき業務運営の目標として、法人ごとに3~5年の中期目標を定め、各法人は、この中期目標に基づいて中期計画及び年度計画を策定し、計画的な業務遂行を行います。
そして、主務大臣は、毎年度、法人の業務実績について評価を行うことになっています。
また、中期目標期間終了時には、法人の組織・業務全般にわたる見直しが主務大臣により行われます。
今回、私は、法律に基づくこの評価の過程に参加したのです。
さらに、主務大臣の評価に加えて、総務省に設置されている【独立行政法人評価制度委員会】が、政府唯一の第三者機関として、主務大臣が行う目標策定や業績評価をチェックする重要な役割を担っています。
すなわち、【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所】の主務大臣である文部科学大臣の評価について、総務省の委員会でも了承されることによって、正式に公表されることになるのです。
そこで、今回の一定の評価の公表が行われたことには、本研究所が独立行政法人として適切な運営をしていることを示すものであり、文部科学省から同日に発出されている【独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の見直し内容】にそって、今後もさらに着実に特別支援教育に関する【ナショナルセンター】としての機能を果たしていただくことを期待します。
さて、この重い責務を果たす際、私は改めて【教育基本法】を読み直しました。
第一条には【教育の目的】として、【教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。】と定められています。
その目的を果たすために、第四条には、【教育の機会均等】が次のように規定されています。
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
加えて、第2項には、【国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない】と規定されています。
さらに、第3項には【国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない】とされています。
この第2項に明記されている【国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じる】義務を果たすためには、障がい者に寄り添った適切な調査研究に基づく実践が必要です。
また、改めて【こども基本法】第三条の基本理念も読み返しました。
第二項には、【全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること】と明記されています。
ここで【全てのこども】には、もちろん障害のあるこどもが含まれています。
【特別支援教育】は、【全てのこども】に教育機会を保障するための取組みであり、多様性を尊重した視点に基づく教育の在り方なのです。
※写真の前列左から文部科学省初等中等教育局の生方特別支援教育課長、清原、酒井企画官、後列左から渡邉課長補佐、新井さん、初山さん