東京都医師会尾崎治夫会長による講演【医療崩壊を防ぐために皆ができること】を聴いて
(公財)三鷹市医師会(会長:渡邉直幸医師)主催の第13回市民講座を聴講しました。
三鷹市長在任中は共催の三鷹市を代表して参加し、聴講していました。
退任後はなかなか参加できずにいたところ、ちらしで講師が市長在任中に折々におめにかかっていた順朋会おざき内科循環器科クリニック院長で、東京都医師会会長の尾﨑治夫先生であることを知り、ぜひ再会して、尾崎会長の医療に関する危機感を伺いたいと思い、予定を繰り合わせて会場の三鷹市公会堂光のホールを訪問しました。
尾﨑会長を光のホールの玄関でお待ちすると、颯爽と登場されました。
実は、私は尾崎会長とは同い年でもあり、尾崎会長の元気は自分自身の元気のようで力付けられました。
尾﨑会長に、ぜひ、お話を広くお知らせしたい趣旨をお話しして講演中の写真撮影の許可をいただきました。
会場に着くと、三鷹市医師会理事で、私が三鷹市長在任中教育委員をお願いしており、現在は東京都の教育委員をされている秋山千枝子先生がいらして、ご一緒に講演を聴講しました。
市民講座の司会は三鷹市医師会学術委員長で、松﨑整形外科医院長の松崎健一郎先生です。
そして、三鷹市医師会の前会長で、現在監事のうちはら内科クリニック院長の内原正勝先生が座長として、尾崎先生のプロフィールを紹介されました。
尾﨑会長は順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学医学部循環器内科学講座に入局し、同講座助手・同講座講師を経て、1990年におざき内科循環器科クリニック開設されました。
また、順天堂大学医学部循環器内科で非常勤講師をされています。
2011年東京都医師会副会長、2012年日本医師会監事を歴任され、2015年東京都医師会会長に就任され、2016年日本医師会理事にも就任されています。
尾﨑会長は、【近未来の東京に何が起こる〜医療崩壊を防ぐために皆ができる事〜】というタイトルで講演されました。
前半は、東京都が直面する医療に関する課題を概要として、次のように説明されました。
●通院患者及び入院患者は全国では東京のみ増える予測がなされており、今後の長寿化とともに在宅医療増加も増加する
●人口が減少している地域はオンライン診療を使ったり、統合すれば対応可能と考えられるが、東京都は当面は人口が減らないことを前提とした対応が求められる。
●現時点では、8つの県の人口が世田谷区より少ないのが実態である。
●平均寿命の男女差があることから、今後は女性だけの1人住まいが増えることが予測されている。
●医師不足については、東京独自の問題があり、実は人口10万人あたり医師数が多いのは京都府、徳島県であり、少子化で医師不足・看護師不足が顕在化している。
●そこで、団塊の世代が85才になるまでのこれからの10年にできることを進めることが必須である。
たとえば、生活習慣病予防、フレイル予防、特定健診の受診、生活習慣病の重視などのより、医療介護費の増加を防ぐ必要、高齢者への支援金を減らす必要があり、そうでなければ保険料の負担増が想定される
●消費税は社会保障費に充当されているが、現時点では診療報酬は上がらない傾向にあり、病院の8割、診療所内科系の4割が赤字と言われている。
今後、病院・委員の倒産が増える恐れもあることを共有したい。
●医師・看護師の離職率・移動は地方より東京が相対的に高い。
●医師・看護師のみでなく、介護士・理学療法士等の職種も必要。人手は減るのに患者は増えるのが東京。
●そこで、フレイル予防が不可欠。ちょっとした糖尿病は深刻にならずに、タンパク質を摂ってフレイル予防を。
●認知症予防には、社会生活から脱落しないこと、いろいろな人と一緒に活動する・運動することが有効であり、【交流】が重要。
●喫煙率は東京が13.6パーセント、全国平均16%であり、たばこニコチンは動脈硬化・がん・肺の病気を誘発。
●がん検診を受ける人は日本では4割、世界は8割。高額医療費補助もあり、早期発見が必要であることから、定期検診必要。
●尾﨑先生は【健康食品対策委員会委員長】を12年しており、サプリメントは飲むときはかかりつけ医に相談すること。
後半は、東京都医師会が作成し、参加者に配布されていた【東京医療崩壊?! ~あなたと愛する家族のためにできること〜】の冊子の内容を説明されました。
その項目は以下の通りです。
【課題】
1.少子・超高齢社会という問題
2.高齢者の医療費財源は支援金頼み?!
3.東京でも医師が足りない地域が増加?!
4.コロナ禍を教訓に医療提供体制の見直しが必要!
【対策】
1.禁煙を促進して健康リスクを回避
2.多剤服用は避けて適正な使用を!
3.かかりつけ医をもとう!フリーアクセスは適正に
4.救急車はあなただけのものではない!
5.軽症な場合は薬局のスイッチOTC薬の活用も
6.未病対策・フレイル予防で健康寿命を延ばす!
7.正しい情報を理解してヘルスリテラシーを高めよう!
尾﨑会長は、【医療崩壊】という言葉で警鐘を鳴らしつつ、私たち自身が、みずから健康管理に努め、特に高齢者はフレイル予防に努めることで、医師、とりわけ【かかりつけ医】に適正に相談しながら、健康長寿をはかろうという呼びかけをしてくださったように思います。
尾﨑先生の講演の後に、内原先生から、令和7年度 東京都相互理解のための対話促進支援事業として「医師への上手なかかり方」についての説明がありました。
特に、【かかりつけ医】の重要性とその探し方や救急医療の利用の際の留意事項などについて説明してくださいました。
私も、改めて、東京都の医療をめぐる課題を認識するとともに、自ら意識を持って、積極的に健康維持・健康促進に努める意思を新たにすることができました。
清原慶子 Official Website
