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【公民館・図書館・博物館の現状とこれからを考えることの意味】

【公民館・図書館・博物館の現状とこれからを考えることの意味】

私は、文部科学省中央教育審議会生涯学習分科会を務めていますが、同時に、この分科会の中に設置された【社会教育の在り方に関する特別部会】の部会長を務めています。

この特別部会は、2024年6月25日に諮問された【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】に応えるために設置されました。
主たる諮問事項は、①社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策、②社会教育活動の推進方策、③国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方の3つの事項です。
現在は②社会教育活動の推進方策についての審議を重ねています。
この事項には、【地域と学校の連携・協働の更なる推進方策、公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策、青少年教育施設等における青少年体験活動の推進方策、地域コミュニティに関する首長部局の施策や多様な主体が担う活動との連携・振興方策、共生社会の実現に向けた障害者・外国人等を含めた社会教育の推進方策など、多くの検討課題が含まれています。

11月6日に開催された第12回のハイブリッド会議では、社会教育の主たる施設である【公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策について】意見交換をしました。
文部科学省内の会議室には、(公社)全国公民館連合会の中西彰会長、(公社)日本図書館協会の植松貞夫理事長、(公社)日本博物館協会の半田昌之専務理事にお越しいただき、発表していただきました。

最初に公民館連合会の中西会長は、「公民館における社会教育活動の推進方策」と題して発表されました。
コロナ禍の公民館の閉鎖や使用制限を経験して、参加意欲の低下が課題となる一方で、デジタル技術の進化が進んだといった経過を経て、現在の公民館は、施設形態の多様化、指定管理制度の導入・所管部署の多様化、参加意欲の低迷や担当者の知見の継続の困難などの課題があることが紹介されました。
その課題解決を目指して、新たな公民館活動として、①地域や学校との連携、②世代間交流、③デジタル技術を支える人材の育成に絞って提案されました。

図書館協会の植松理事長は「生涯学習の施設として地域コミュニティの基盤形成に資する図書館」と題して発表されました。
図書館とは、図書や資料を中核とした「知をつなぐ知識の再生産・発展のための社会的仕組み」であり、特に公立図書館の特質を次のように説明されました。
すなわち、公立図書館はすべての住民を利用対象として、予約不要、利用無料、来館時刻・在館時間に制約がない施設であり、数多くの来館者が、さまざまな目的で(目的がなくても)来館し、ほぼ常時人の出入りがあることから、周辺効果として、にぎわいの創出、地域の再活性化、複合施設のキーテナントであることも紹介されました。
地域の社会教育施設として. ①住民の学習能力向上:生涯にわたる学習の場、②地域情報提供、③地域問題解決への貢献、啓発・啓蒙活動、④交流の場・学び合いの場の提供、⑤子供たち(次世代)の育成の機能を適されました。
その上で、情報流通のデジタル化、デジタルスマートデバイスの発達などで、2020年には図書館がなくなるだろうといわれていた中、メディアリテラシーの確保など、現代に合った図書館の存在意義を再定義すべきであり、デジタル化を生かした非来館者サービスの充実も提起されました。
多機能化。多機能融合型複合施設の一画としての図書館の機能強化を適されました。

博物館協会の半田専務理事は、「博物館における社厳しい運営環境の中で会教育活動の推進方策について」と題して発表されました。
博物館は、文化芸術基本法の制定、博物館法の改正を経て、社会教育施設であるだけでなく総合的なショウガ宅習、文化芸術鑑賞、観光、地域振興など、多様な役割を期待されていると紹介されました。
そして、運営形態の多様化、社会的役割の多様化から、活動の力点が収集保存活動から教育普及活動に移っている傾向を指摘されました。
文化審議会【博物館法制度の今後の在り方について】答申(2021年)を紹介されました。
それは、「守り。受け継ぐ(収集・保管)」「わかち合う(調査研究・情報発信)」「育む(教育・愉しむ・創る)「つなぐ、向き合う(連携・課題解決)」です。
さらに、これからの博物館に求められる考慮すべき方向性について、Diversity(多様性)Equity(公平性)Accessibirity(利用のしやすさ)Inclusivity(包摂性)を提起されました。

その後、髙田地域学習推進課長より【本日議論していただきたいこと】についての説明、文化庁横田企画調整課課長補佐より、博物館をめぐる現状についての説明を受けて、委員による意見交換をしました。
伊東香織・倉敷市長から、社会教育施設に加えて、児童館や高齢者対象の「いこいの家」などの多数の施設を「市民交流センター」として位置付けることで、多世代交流を図る事例が紹介されました。
山本町長からは、北海道公民館協会会長として、公民館を社会教育施設としてだけでなく、住民のまちづくりの拠点として、首長や議員が重視してい動向を紹介されました。
関委員、齊藤委員、小見委員からは、開かれた学校教育の取組みと社会教育の親和性が高まる中、さらに地域学校協働活動と社会教育施設の連携が提起されました。
萩原副部会長からは、国立女性会館の理事長として、全国の男女共同参画センターも社会教育の拠点として機能していることが紹介されました。

この日は、社会教育施設の現状を共有するとともに、多様な委員の皆様から、少子化に伴う施設の複合化についても、決して悲観的にのみとらえるのではなく、むしろ、それぞれの機能が連携し、利用者の多世代交流による地域課題解決の拠点となる未来志向の可能性が示唆されました。

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